アインクラッド 前編
恐怖の元凶
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
制的に頭の中に叩き込んでいく。
「ああ、あ……」
痙攣した声帯はまともに声を出すことさえ出来ず、漏れ出たのは掠れた響きのみ。四肢から力が抜け出て、トウマは力なくその場に座り込んだ。喉がカラカラで、一瞬だけ漏れ出た叫びも、もう発することが出来ない。『脳を破壊し、生命活動を停止させる』という一文だけが、脳内を一人で突っ走る。
そして、トウマの脳内を駆け巡る不安や動揺が光速に達し、意識がショックで意識が遠のきかけた頃。広場で一つだけ、他とは違う声色の叫びが上がった。
「……そうや! βテスターや!!」
いきなり轟いた濁声に、広場はしんと静まり返り、全員が小柄な男に注目を浴びせかける。男は興奮した面持ちで告げた。
「クローズドβテストに当選したモンがこん中にもおるはずや! そん知識があれば……死なずにすむかも知れへん! 誰か、ワイらに攻略法を教えてくれ!!」
「お、おい。それって……」「俺たち、生きれるのか……?」「βテスター! βテスターはどこだ!? 早く出てきてくれ!!」
悲壮感が懇願へと変わった叫びが徐々にその大きさを増し、はじまりの街中央広場に飽和する。
トウマはすぐにでも手を上げようとする。しかし、隣の男性が放った言葉が、その手の上昇を止めた。
「頼む! 出てきてくれ! 俺たちを守ってくれ!!」
トウマははっとして、そこかしこから上がる声に耳を傾け、そして気付いた。彼らの叫びは、自分を死なせないでほしいということ。つまり、今ここで手を上げれば、この広場に残る約9000人を守りきる義務が生じるということなのだ。
そこに意識を向けた瞬間、伸ばしかけた手が嘘のように上がらなくなった。トウマは必死に手を動かそうとするが、9000人の命の重みがそれを妨げる。それでもトウマは格闘を続けるが、その間にもう一度響いた濁声が、手の動きを完全に止めた。
「……何でや! 何で出てきてくれへんのや! βテスターは何処に行きよったんや!?」
「…………あっ!!」
涙混じりになった声の後に、思い出したような叫びが続いた。βテスターを探そうとする目が、全てその男に向けられる。
「そういえば、俺、街の外に向かっていく奴を見た! それも、演説が終わってすぐに!!」
「それ! 俺も見た!! きっとテスターだ!」
「私も! 向こうへ走ってった!!」「俺もだ! 二人組みだった!!」などという発見報告が続く。そして、再び絶望感が滲み出た声が、決定的な一言を投じた。
「じゃ、じゃあ……。テスターは俺たちを……見捨てた、のか?」
その瞬間、広場を包んでいた高揚感は一気に消え失せ、何人ものプレイヤーが膝から崩れ落ちた。一縷の望みを託して残っているテスターを探そうとするものも
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ