A's編
第三十一話 前
[6/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
付属小の制服の上から指定のコートを羽織っていた。最近は寒さが強いこともあってか可愛らしいピンクのミトンもしていた。
「それで……こうやって僕を呼び出した理由は何?」
アリサちゃんが出したんでしょう? と確認するように手紙を取り出しながら言う。アリサちゃんは、僕が指示した手紙を別段否定するわけではなく、僕から少しだけ視線をそらすと、頬を染める。
え? なに、その反応。
アリサちゃんの思わない反応に驚いた。彼女の様子からして、その可能性を捨ててしまっていたからだ。いわば、不意打ちだろう。だから、彼女を意識しているしていないにかかわらず反応してしまった、という言い方が正しいのだろうか。
「だって……ショウと最近……ゆっくり話してなかったから……」
ぼそぼそと聞こえるか、聞こえないかぎりぎりの声音でアリサちゃんは告げる。
彼女の口から告げられたのが、僕が想像した類のものではないことに安堵―――万が一そうであれば、僕はどう答えればいいのかわからない―――し、同時にそういえば、アリサちゃんは長いこと、具体的にはあの遊園地を断って以来、きちんと話した日はなかったと思う。挨拶やちょっとした会話ぐらいはあったかもしれないが。
すずかちゃんの話だと、落ち着くまでは、という話だったけど……この展開からすると彼女は落ち着けたのだろうか。ならば、僕も彼女に直接伝えるべきだろう。
「ごめんね、アリサちゃん。遊園地行けなくて」
はやてちゃんのことがあったとはいえ、はやてちゃんを優先させると決めたのは僕だ。だから、何かしらの事情があったとはいえ、僕は一言謝るべきだと思ったのだ。だから、僕はアリサちゃんに頭を下げていた。
だが、その様子を見て、アリサちゃんは慌てていた。
「い、いいわよ。ショウにも何か用事があったんでしょう? だったら仕方ないわよ……」
どうやら落ち着いたというのは本当らしい。今までのアリサちゃんなら、強く言い返してきたはずだから。このことに関しては彼女の中で何か決着がついていると考えていいだろう。
「本当にごめんね。今度、何か埋め合わせするから」
翠屋でシュークリームぐらいが妥当だろうか? アリシアちゃんのように『蔵元翔太フリー券』を渡すか? とも思ったが、あれは家族の間だから有効であって、さすがにアリサちゃんには渡せない。
「うん、楽しみにしてるわっ!」
本当に楽しみにしてくれるのだろう。アリサちゃんはこの場に来て、初めて笑った。彼女の笑顔を見て、僕もようやく安堵できた。アリサちゃんと仲がこじれているとはこの二週間考えていなかったが、それでもしこりの様に残っていたから。はやてちゃんの事件が終われば、ゆっくり話をするつもりだったが、彼女から動いてくれて
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ