A's編
第三十一話 前
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わせて冷静に対処できる自信はあるが、生憎ながらこの手の手紙に関する経験はこれが初めてだった。
僕はドキドキと胸を高鳴らせながら犬のシールをはいで、中に入っている便箋を取り出す。それも花があしらわれた可愛らしい便箋だった。どんな内容が書かれているのだろうか、と目を走らせてみたが、その行為は一瞬で終わった。
なぜなら、そこに記された文章はたった一文しかなかったからだ。
『あなたに会いたいです。』
そして、その下には本日の日付と場所と時間だけが記されていた。ここにも差出人の名前はない。便箋の裏も見てみたが、そこには真っ白な裏面を見せるだけで何も書かれていなかった。
……まさか、あぶりだしとかじゃないよね?
そんな漫画のようなシチュエーションに対して漫画のような対処法が必要なのか、と一瞬だけ頭をひねらせた後、丁寧に便箋をたたむと入っていた封筒に取り出した時と同様に封筒に仕舞うと今度はくしゃくしゃにならないようにノートの間に挟んでカバンの中に仕舞い込んで、階段の踊り場を後にした。
階段の踊り場から今度こそ教室へと向かう。僕はもともと授業開始の30分前には学校に来ているからこの程度の寄り道ならば、問題はないが、そこで考えている余裕はなさそうだ。だから、とりあえず教室へと向かう。
教室に入った僕は、タイミング的には珍しく遅いこともあってか、いつもよりも多くのクラスメイトに朝の挨拶と遅くなった理由を聞かれながら自分の席へと向かう。冬場の寒さをしのぐためのコートもこの教室の中では無用の長物。脱いだコートを椅子にひっかけて座る。
いつもなら、はやてちゃんの家から借りてきた本の読書に入るのだが、今日はそんな気分ではない。頬杖をついて思考に陥る。もちろん、内容は先ほどの手紙のことである。
たった一文。だが、その内容を考えればあれがラブレターに近いものであることは一目瞭然だった。僕だってそう信じていただろう。ここが小学校でなければ。これが中学校や高校であればわかる。しかしながら、ここは聖祥大付属小学校なのだ。ラブレターが行き来するような場所ではない……と思う。
いやいや、小学校も5年生や6年生ならありえるかもしれない。男の子はともかく、女の子はそういったことには早熟だから。もともと、成長の度合いで言えば、中学校を卒業する間際までは、女の子のほうが早いのだから。心も身体も。ゆえに高学年ならばありえないわけではない。
ならば、この手紙が高学年の女の子から僕に来たものか? と言われると首を傾げざるを得ない。彼らとは2年か3年程度の年齢差しかないとはいえ、僕たちの年代の2、3年は非常に大きな大きな壁である。その差を乗り越えてくるとは到底考えにくい。これが大人の女性でちょっと性的嗜好が特殊であれば話は
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