A's編
第三十一話 前
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はやてちゃんの家が襲撃されてから一週間が過ぎようとしていた。結局、あの事件の詳細をクロノさんが、口にすることはなかった。ただ、彼らの言い方とクロノさんの難しそうな顔と事件の次の日に頭を下げて謝ってくれたことから、大体の事情を察することはできた。
クロノさんが事情を言わないのか、言えないのか、僕にはわからない。しかし、どっちでもいいとは思っている。悪いのは彼らであり、クロノさんではない。たとえ、相手が元同じ職場の人間だったとしても、クロノさんに責はないのだから。あれから護衛の数を増やしたらしいが、それも無駄に終わりそうだった。僕としては無駄に終わってくれたほうがありがたい。
一方、クロノさんとなのはちゃんのほうも順調らしい。計画通りに進んでいるらしく、このままならスケジュール通りに消化できるらしい。そうすると、はやてちゃんを蝕んでいる闇の書は、クリスマスまでには封印できるようである。
僕としては、喜ばしいことだが、はやてちゃんにその話をすると、なぜか少しだけ暗い顔をするのだ。理由を聞いても教えてくれない。いったい、何が彼女にそんな顔をさせるのだろうか。理由はなんとなく想像がつく。おそらく、まだシグナムさんたちのことが心のどこかに引っかかっているのだろう。
当たり前だ。いくら、知らないと言われたとはいえ、彼女にとって彼らは大事な家族なのだから。しかも、よくよく話を聞けば、彼らはもともと闇の書の守護騎士。彼らに何が起きたか、僕にもはやてちゃんにもわからないが、闇の書が封印される以上、彼らも封印されるとみて間違いないだろう。
だから、暗い顔をしているのだと僕は思っている。そんなはやてちゃんに僕は何も言えなかった。まさか、シグナムさんたちを助けるために闇の書を封印するな、とは言えない。なぜなら、そのままにしておくとはやてちゃんは死んでしまうからだ。これは最初に説明されたことだから知っている。
それに加えて、さらに闇の書には転生機能があり、次の場所へ転移し、破壊を繰り返す。その結果がわかっているからこそ、はやてちゃんは封印にも納得したのだろう。もちろん、闇の書を復活させることも意識しているようだが。
さて、何にしても残り一週間―――12月24日、クリスマスイブにはすべてに片が付きそうだ、とクロノさんも言っていたし、それまで何事もないことを祈るばかりである。
しかしながら、そんなことを考えながら登校したのがまずかったのか、まるで僕の祈りをせせら笑うような出来事が待ち構えていた。
僕は、登校した後、いつも通りに下足場から上履きを取るために靴箱を開き―――閉じた。
目の前の光景が信じられなくて、いや、信じたくなくて。だから、事実を確かめるために僕はもう一度、目をこすり、寝ぼけていない
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