亡国(やみ)の欠片
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一通り襲撃の内容をメモしたヴィクトリアは深々と背もたれに体重を預けた。
「申し訳も……」
それを呆れととったのか、大尉が深々と頭を下げる。その下げた頭の下には嗚咽に混じって大粒の雫がカーペットに染みを作っていた。
対面するヴィクトリアは椅子に座りながら、感情を出さずに大尉に声を掛ける。
「謝罪をするのは敵の手を読めなかった私のほうです。それより怪我は大丈夫? 絶対安静なのでしょう?」
「もったいないお言葉です」
「大尉の情報は非常に役に立ってくれました。下がってゆっくり休んでください」
「は……」
大尉が出て行くのを待っていたかのように、ヴィクトリアの右手で持っていたペンが指を当てている部分から音を立てて真っ二つに圧し折れた。中のインクで指先が汚れることも気にせずにヴィクトリアは左手で机の上にあった電話を取り数回だけコールし、電話が出られる前に切る。
約5分後に執務室には両手に一杯の資料を抱えたジェーンがやってきた。
「お呼びでしょうか……あ、ウィンザー様、お手が……」
「構わないからジェーン、被害報告」
ジェーンは今まで抱えていた資料を器用に片手だけで持つと自分のポケットからハンカチを取り出してヴィクトリアの手を拭こうとしたが、それを制してヴィクトリアが先に報告をするように言った。ジェーンは渋々といった感じでハンカチを机の上に置くと、漏れたインクで汚れない位置に報告書の束を置いていき、その間にヴィクトリアは自分の手をハンカチで書類が汚れないように綺麗にインクを拭い去った。
「重傷36名、軽傷87名、他にも火傷や打撲による軽い怪我人も含めて負傷者は全135名です。死者は何故か0ですが……」
「襲撃時の現状」
「こちらです」
ジェーンは重ねられている報告書をいくつか捲り指定されたページをヴィクトリアに提示して見せた。
「防空ラインへ突如所属不明ISの侵犯を確認。IS隊と航空隊発進後に基地に襲撃……いえ、既に潜入してと考えるのが妥当ね。事を起こしたのはわずか30分。その間に最新セキュリティと警備に当たっていた精鋭を全て打ち倒してISを強奪……未だに犯人の行方は知れず、か。これだと内部に工作員のいた可能性も高いわね」
「申し訳ありません。まさか情報戦で遅れを……」
「過去の話はいいわ。今はどうやって取り返すか。次、亡国機業(敵)の行方」
「襲撃直後から大西洋に展開可能な艦隊、IS部隊を全て配備しています。大西洋からの海路、空路は使用不可能と思われます」
「次、内陸の陸路空路の封鎖」
「ドイツ、イタリア、フランスといった主な国は極秘裏に協力してくれていますが、他国に弱みを見せるわけにもいかないとのことで上層部が情報制限を……」
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