SAO編
episode6 夏の日、午前三時2
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要。
すぐにアスナを見つけられたのは幸運だ。凄腕の細剣使いであると同時に、優れた指揮官でもあるアスナが周囲を見回し、すぐさま指示を出す。
「シド、煙を何とかできる!?」
「っ…できる。ただ、数秒の吹き飛ばし効果がある! 伏せないと、」
「構わないわ! すぐにお願い! 皆伏せて!!!」
アスナの指示を聞くなり、俺は左のポーチからアイテムを取り出す。アイテム名、《グレネードハリケーン》。それを単発『体術』スキル、《スライス》で叩き割る。響く轟音と、捲き起る巨大な暴風。すぐそばで伏せた俺やアスナに僅かな削りダメージが入るが、凄まじい勢いの風は一気に煙を掻き消してくれた。
それによって、フロアの惨状が露わになる。
慌てて身を伏せる者、罠に苦しむ者。
そして幾つかの脇道からの襲撃に、果敢に反撃する者達。
「部屋中央付近の人は罠の破壊と回復を! 戦線近くの人たちはいったん下がりつつ前線を何とか維持して! 最低四人は固まって、スイッチしながら戦うのよ!」
素早く状況を判断したアスナが、的確な指示を飛ばす。確かリーダーは聖竜連合の幹部だったはずだが、混乱の中で罠にかかったか或いは前線で敵と切り結んでいるのかその声は聞こえない。だがアスナは流石のカリスマですぐさま皆を統率し、体勢を立て直していく。
そして。
「アスナ。俺は、打ち合わせたように、『戦闘時の対応』を取ればいいんだな?」
「っ、お願い! 私もすぐに援護に向かうからそれまでは前線で、」
「すまん。俺はやっぱ、一人がいいや」
「っ!? シドさん!?」
走りだす俺を止めようとアスナが手を伸ばすが、他のメンバーの悲鳴にアスナの注意が逸らされる。と同時に、俺は一気に走りだす。発動する『軽業』スキルの技によって地面を激しく踏みしめ、宙に体を踊らせる。
行く先は、剣戟の交差する最前線の、さらに奥。
飛び越える先で、一人の男が目線だけでこちらを見る。
「っシド!?」
「…キリト。…ありがとな。あっちは、任せろ」
俺の筋力値ではありえない高度を三角跳びで稼ぎ、前線で鬼神のように剣を振うキリトの頭上を越えてラフコフの連中の真只中に飛び込む。キリトの視線と俺の視線が、一瞬交錯する。思わず笑ってしまった。キリトの目線は、多少の驚きは有れどもアスナのそれと違い、俺を引き留めようとする意志が見られなかった。
いや、寧ろ。
―――いってこい、シド。
おお、任せな。
励ますようなその視線を受けて心の中だけで頷き、俺は敵の中央に飛び込み、すぐさま体を転がして床に手をつく。
そして、その体をばねのように弾ませ、両足にエフェクトフラッシュを纏って。
《スパイク・ハリケ
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