五十 攻防戦
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と二代目。懐かしき双方に感慨を抱くものの、三代目たるヒルゼンは地に膝をつくわけにはいかなかった。
彼の背中には里の、里に住まう者達の命がかかっている。
親指の皮を噛み切る。だがそれより速く初代が印を結んだ。屋根を突き破り、巨大な樹木が根を張り始める。
「マズイっ!これは初代様だけの秘術…ッ!」
「【木遁秘術・樹界降誕】!!」
初代がそう叫ぶや否や、その場は木々によって盛り上がった。生き生きとした樹木が生い茂る。
辛うじて残っていた岩壁さえもその生命の前には平伏した。屋根を、絶壁を突き破る。
屋根瓦など既に形すら見えず、繁茂する森。
火の海から海、そして樹海へ。場所を無視して織り成される緑の海原は生命力に満ち溢れていた。
死者が造り上げたとは思えないほど。
しなやかに撓んだ樹木の枝々がヒルゼンを捕らえんとうねる。曲がりくねった木々の合間を軽やかに彼はすり抜けた。
しかし老いた細い足首に枝が絡みつく。外そうと足掻くヒルゼンの視界がぐるりと引っ繰り返った。逆立ちの状態。
青々とした大木がヒルゼンの身をぶらんと、だが確と捕らえていた。絞めつけてくる太い枝々に呻く。
最後の砦であった岩壁。皮肉にも其処から生える樹木に、ヒルゼンは身体の自由を奪われた。
「ついに捕まっちゃいましたねぇ…先生?」
それまで優雅に傍観していた大蛇丸が笑みを浮かべる。自分を見上げる弟子の姿にヒルゼンは目を細めた。
逆さまとなった大蛇丸の顔が翳んで見える。無意識に流した涙は額当てを伝って森に滴下した。
「……大蛇丸…」
擦れた声でヒルゼンは大蛇丸の名を呼んだ。かつての弟子の笑顔に、変わらぬ笑みに、彼は涙した。
どこでどう間違ってしまったのか。何時から自分は誤ったのか。
「かつては『忍の神』と謳われた貴方ですらこの様とは…。年は取りたくありませんねぇ」
くつくつと肩を震わせた大蛇丸がぼやけた視界の中で嘲笑う。曇った瞳の奥でヒルゼンは決意した。
涙を振り払う。
「その言葉、忘れるでないぞ」
愛弟子への情愛を切り捨てる。涙と共に流れた迷いはついに吹っ切れた。
とうとう大蛇丸を見限ったヒルゼンの双眸が冷たく光る。
「その二つ名が伊達ではない事、その身を以って知るがよい」
突然の変化を遂げた我愛羅の変わり様に、サスケはただただ愕然としていた。
執拗に自分へ攻撃してくる我愛羅の対処に追われる。防戦一方である相手に物足りなさを感じたのか、我愛羅の口が幾度となくサスケを唆す。
「なぜ逃げる…?そうか、この俺が怖いか」
嘲笑する。刹那、我愛羅の背後で、チッチッチ
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