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SAO−−鼠と鴉と撫子と
28,月夜の下で
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。俺はもう無理だ」

攻略組、その言葉に私の体は反射的に凍りついた。
だけど、攻略組ってどういうことなんだろう?

「25層の誤解ならもう大丈夫だ。《旋風》のクロウの前線復帰を皆が望んでる」
「その2つ名は捨てた。悪いなキリト。迎えに来てくれたのはありがたいけど、お前だけでも前線に戻れ」

そう言ったクロウの声はあっけらかんとしているけど、私はもうそれどころではなかった。

《旋風》――かつて攻略組にいたトッププレイヤーの名前は私みたいな中級者プレイヤーでも知っていた。
《旋風》の名前が聞かなくなったのは、もっとも多くの死人を出した25層の攻略戦。
解放隊やドラゴンナイツの幹部数名が死んだの一緒に死んだのかとダッカー達が話していたのを覚えている。

クロウはこのゲームの頂点にいた人――本当は強い人。
じゃあ、私は?
私はこのギルドの中でどうなるの。
クロウがいたから、一人ぼっちじゃなかったのに。

「月夜の黒猫団は強くなる。いつか攻略組にも追いつける。その時に――」
「キリト。俺は攻略組から逃げたんだ。もう戻れない」

平和ぼけしたようなBGMのシンフォニーが妙にうるさかった。
キリトたちの声が聞こえるけど、もう何を言っているのかわからない。

私は、気がついたらその場から走り出していた。






どれだけ時間が経ったのか、わからない。
街の外に逃げるのは怖くて、だけど誰とも会いたくなくて、私は誰も来そうにない橋の下へと逃げ込んでいた。

目の前を本物じゃない川が流れている。
サラサラとした水のようではなくて、どちらかと言えば心太とか寒天のよう。
もしも、この中に入って流されたらこんな川でも自殺できるのかな。
無意識に伸ばした手が水に触れた瞬間、その冷たさにびっくりし手を引っ込めた。
「出来るわけないよね」
分かっていたけど、呟いて何も返事がないのは寂しい。そのまま、私は再び膝を抱え込んだ。

この世界で、私は初めて一人になった。
デスゲームが始まってからは皆がいた。
ずっとずっと一緒だった。一緒だと思っていた。
なのに、何で私は一人で膝を抱えて座り込んでいるのだろう?
どうして、私はこんなにも一人なんだろう?

「――サチ?」

声が聞こえた。
激しい息遣いの中、優しさのこもった声。
びっくりして顔をあげると、クロウが肩で息をしながら立っていた。

「クロウ。……どうして、ここがわかったの?」
「街中を……ぜんっぶ、走り……まわった」

乱れた息で、フラフラと私の横に座り込む。
街中を全部なんて出来るのは無理じゃないの……喉の先まで出かかった言葉を何とか飲み込んだ。
出来るのかもしれない。私の知っているクロウではなくて、攻略組で活躍した
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