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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十六 〜薊城〜
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き。お兄さんらしいですよ」
「風。そんな大層なものではない。私はただ、やるべき事をしているのみだ」
「果たして、そうですかな? 主の処断なしでは、事は未だ、解決を見ておりますまい」
「せやな。ウチかて、あそこまではようせえへんけど。歳っちがやったんは、一見鬼の所業やけど、せやなかったら……全員、処刑せなあかんかったやろな」
「だから、お兄ちゃんが気にする事はないのだ♪」

 ……ふ、全てお見通し、という事か。

「ご主人様のなされようは、確かに非情な一面はあります。ですが、果断で迅速な事は確かです」
「一部では謗りも受けましょう。ですが、結果を伴う決断は、必ずや後で生きましょう。些細な悪評など、我らが吹き飛ばしてみせましょうぞ」
「……そうか」

 私には、迷いなど許されぬようだ。
 皆が、こうして信頼してくれる以上は、な。

「土方様」
「何だ」
「はっ。捕虜の方から、火葬を手伝いたい、と申し出がありまして。如何致しましょう?」

 罪滅ぼしのつもり、であろうか?

「……良かろう。だが、おかしな真似をすればその時は容赦せぬ。そう申し伝えよ」
「はっ、では!」

 住民と合わせ、数千もの亡骸を弔う作業は、延々と続いた。



 漸く、全てが片付いた。
 部隊の立て直しは、皆の奔走のお陰で、どうにか形になったようだ。

「後味の悪い寄り道でした。……無念です」
「皆、同じ気持ちでしょう。ですが、今はまだ、私達の力は微力。やれる事に全力を尽くすしかありません」
「とにかく、黄巾党をぶっ飛ばすしかないのだ」
「ふっ、単純だな、鈴々は。だが、真理でもある……我らは、それしかありませぬからな」
「ですねー。とにかく、北平を目指しましょう」
「せやせや。ところで歳っち。あいつら、どないするんや?」

 霞が、捕虜の一団を指さす。
 その殆どが、我が軍についてくる事を望んでいる。

「今回は、それはお止め下さい」
「風も、そう思いますねー」

 軍師二人が、口を揃えて諫めてきた。

「何故だ? 解き放てばどうなるか、言うまでもなかろう?」
「そうなのだ。折角捕まえたのに、また悪さをされたら大変なのだ」

 愛紗と鈴々はすかさず反応を見せるが……ふむ、星と霞はそうではないらしい。

「おやおや、星ちゃんと霞ちゃん、何か気付いたようですねー」
「……いや、気付いたという程のものではないが。今の奴等であれば、解き放ちも問題ないのではないか?」
「それは何故ですか、星?」
「主の処置がある。あれを目の当たりにしたからこそ、皆に畏れがある。再び愚行を繰り返せばどうなるか、身に染みていよう」
「ではでは、霞ちゃんもどうぞ?」
「ウチは、糧秣の問題が気になる。幽州は飢饉のせ
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