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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十六 〜薊城〜
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くれ、鞘に収めた。

「お……おい……。待って……くれよ……」

 掠れた声で言う男だが、私は振り返るつもりはない。

「御大将。こいつはどうなさるんで?」
「捨て置け。どのみち助かるまい」

 出血が酷い。
 放っておけば、確実に死に至るだろう。

「こ……この……おに……め」

 そうだ、私は鬼だ。
 だからこそ、毅然と臨むのみ。
 周囲の賊仲間は、私の処置を見て、皆震え上がっている。

「正直に申すが良い。この中で、女子供を手にかけた者。また、女子を手籠めにした者は、立て」
「…………」
「どうなのだ。それとも、全員が同罪か?」

 ……反応なし、か。

「ならば、やむを得まい。全員、あの男のように、苦しむが良い」

 再び、兼定を抜く。

「ま、待ってくれ! 小頭の命令で、俺達は仕方なくやったんだ。けど、女は手を出していねぇ!」
「てめぇ! 仲間を売るつもりか!」
「お、俺はもともと、あんたらのやり方が気に入らなかったんだ!」
「そうだそうだ!」

 口々に、小頭と呼ばれた男は、仲間からの非難を浴びた。

「その話、確かであろうな?」
「う、嘘じゃねぇ! 犯った女から、髪飾りを奪ったんだ! 持っているから確かめてくれ!」
「よし。その男、改めてみよ」
「はっ」
「な、何しやがる!」

 兵の一人が、男の懐中に手を入れた。

「あった! 土方様、確かに髪飾りが」

 銀細工の、見事な装飾が施された髪飾り。
 元の持ち主が、さぞや大切にしていた品であろう。

「……外道め。貴様など、死すら手緩いわ!」

 兼定を振るい、小頭と呼ばれた男の手首を、斬り飛ばす。

「ひ、ひぃーっ! お、俺の手が!」
「……他の者は、どうだ?」

 こうなると、後は雪崩を打つかの如し。
 所詮は賊、その程度の連帯感でしかない。
 ……結局、十数名が女子を陵辱したり、子供を惨殺した事が判明。
 先の二人と同じ目に遭って貰った。
 残った者は、命じられただけか、もしくは躊躇ったり、手を出さなかった……それを信じる事した。

「だが、貴様らの申告が、もし偽りであったならば……。その時は、わかっているだろうな?」

 賊は皆、壊れた振り子のように、首を振るばかりであった。



 火を起こし、死者を一人一人、弔う。

「歳三様。これでは、かなり手間取りますが?」
「やむを得まい。土葬では、穴を掘るのが一苦労だ」
「それに、このままにしておけば、烏や野犬に亡骸を貪られるばかり。せめてもの慈悲……とも言えましょう」
「それだけではないぞ、愛紗。人の死体は腐敗すれば、流行り病の原因となる。このまま打ち捨てる訳にはいかぬのだ」
「死者は丁重に弔うべ
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