第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十六 〜薊城〜
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
くれ、鞘に収めた。
「お……おい……。待って……くれよ……」
掠れた声で言う男だが、私は振り返るつもりはない。
「御大将。こいつはどうなさるんで?」
「捨て置け。どのみち助かるまい」
出血が酷い。
放っておけば、確実に死に至るだろう。
「こ……この……おに……め」
そうだ、私は鬼だ。
だからこそ、毅然と臨むのみ。
周囲の賊仲間は、私の処置を見て、皆震え上がっている。
「正直に申すが良い。この中で、女子供を手にかけた者。また、女子を手籠めにした者は、立て」
「…………」
「どうなのだ。それとも、全員が同罪か?」
……反応なし、か。
「ならば、やむを得まい。全員、あの男のように、苦しむが良い」
再び、兼定を抜く。
「ま、待ってくれ! 小頭の命令で、俺達は仕方なくやったんだ。けど、女は手を出していねぇ!」
「てめぇ! 仲間を売るつもりか!」
「お、俺はもともと、あんたらのやり方が気に入らなかったんだ!」
「そうだそうだ!」
口々に、小頭と呼ばれた男は、仲間からの非難を浴びた。
「その話、確かであろうな?」
「う、嘘じゃねぇ! 犯った女から、髪飾りを奪ったんだ! 持っているから確かめてくれ!」
「よし。その男、改めてみよ」
「はっ」
「な、何しやがる!」
兵の一人が、男の懐中に手を入れた。
「あった! 土方様、確かに髪飾りが」
銀細工の、見事な装飾が施された髪飾り。
元の持ち主が、さぞや大切にしていた品であろう。
「……外道め。貴様など、死すら手緩いわ!」
兼定を振るい、小頭と呼ばれた男の手首を、斬り飛ばす。
「ひ、ひぃーっ! お、俺の手が!」
「……他の者は、どうだ?」
こうなると、後は雪崩を打つかの如し。
所詮は賊、その程度の連帯感でしかない。
……結局、十数名が女子を陵辱したり、子供を惨殺した事が判明。
先の二人と同じ目に遭って貰った。
残った者は、命じられただけか、もしくは躊躇ったり、手を出さなかった……それを信じる事した。
「だが、貴様らの申告が、もし偽りであったならば……。その時は、わかっているだろうな?」
賊は皆、壊れた振り子のように、首を振るばかりであった。
火を起こし、死者を一人一人、弔う。
「歳三様。これでは、かなり手間取りますが?」
「やむを得まい。土葬では、穴を掘るのが一苦労だ」
「それに、このままにしておけば、烏や野犬に亡骸を貪られるばかり。せめてもの慈悲……とも言えましょう」
「それだけではないぞ、愛紗。人の死体は腐敗すれば、流行り病の原因となる。このまま打ち捨てる訳にはいかぬのだ」
「死者は丁重に弔うべ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ