第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十六 〜薊城〜
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が、何処から参った?」
「知らねぇな」
「貴様!」
愛紗が、青龍偃月刀を突き付ける。
「どうした。殺すならさっさとやれよ?」
「ほう。よい覚悟だ」
スッと、愛紗が眼を細めた。
「待て、愛紗」
「ご主人様! このような外道、取り調べるだけ無駄です」
「……待て、と言った筈だぞ?」
静かに、それだけを言う。
「わ、わかりました」
慌てて刀を下げた愛紗に代わり、男の前に立つ。
「では、望み通りにしてやろう」
「……さっさとしやがれ」
「そう慌てるな。……貴様らに殺された民の分まで、しっかりとその身で贖って貰うとしよう」
「……ご主人様?」
「皆の者。少々、私も鬼になるやも知れぬ。下がっているがいい」
皆の顔色が、変わった。
「主。もしや……?」
「何も言うな。残れば悔やむであろう、下がれ」
「嫌なのだ」
鈴々が、はっきりと拒否を口にした。
「そうですね。この場を離れるつもりはありませんよ、私も」
「風も、稟ちゃんと同じですねー」
「……わかっているのか? 私がこれから、何をしようとするのかを」
我ながら、声に怒気が孕むのを抑え切れない。
「主。我らを、あまり見くびらないでいただきたい。皆、主と共に歩むと決めた者ばかりですぞ?」
「ご主人様。皆、同じ気持ちのようです」
「……お前達も、良いのだな?」
周囲にいた兵達も、同じように頷く。
「わかった。ならば、好きにするが良い」
兼定を抜き、突きつけた。
やはり、平然としている。
死は恐れていないようだが……私は、すぐに楽にしてやるつもりなど、毛頭ない。
そのまま、男に向かって振り下ろす。
「ギャッ!」
まずは、左耳を斬り飛ばす。
男は縛られたまま、転げ回る。
「ち、畜生! 殺すならひと思いにやりやがれ!」
「そうはいかん。貴様がしてきた所業、この程度ではあるまい?」
女子供を含め、命を、財を、全てを奪い尽くした外道。
如何なる申し開きも、聞くつもりはない。
「押さえてくれぬか」
「は、はっ……」
兵士が駆け寄り、暴れる男を数人がかりで押さえ付けた。
「は、離せ!」
今度は、膝を斬り割る。
「ひぎゃぁっ!」
おぞましい程の絶叫。
「や、止めてくれ……」
涙か洟水かわからぬが、男の顔は酷い有り様だ。
「ほう? 覚悟を決めたのであろう?」
「こ、こんな目に遭いたくねぇよ……。なぁ、助けてくれ……」
「……その言葉、貴様らが殺した、罪もなき民に言えるか?」
「……うう、痛ぇよ……」
痛みで、私の声など聞こえておらぬ、か。
兼定に血振りを
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