第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十六 〜薊城〜
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のような方に巡り会えたのですからな」
「うむ。皆、期待しているぞ」
……と、城の方が騒がしくなり始めた。
「霞。見てみるか?」
私は、双眼鏡を手渡す。
「ええんか?」
「ああ」
「おおきに。ウチ、気になっとったんや、これ」
妙に、愉しげだな。
「どうだ?」
「真っ暗やなぁ。……いや、松明を持った連中が、動き回っとるわ」
「他には?」
「せやなぁ。後は……火や。なんや、燃えとるで」
「火事ですかねー?」
「いや、ちゃうな。あれは、火付けや」
放火?
しかし、この状況下で放火……ふむ、そういう事か。
「星。様子を見て来るか?」
「しかし、宜しいのですか?」
「状況が変わった。今ならば、さしたる危険もあるまい」
「では、主のご期待に添うとしましょう」
突如として、城門近くで銅鑼や鐘の音が、鳴り響いた。
「ワーッ!」
次いで、鬨の声。
「なるほどなぁ。暗闇に火、音。そら、待っとる奴は驚くやろな」
「人間の緊張なんて、案外持続出来ませんからねー。ましてや、相手が訓練された兵でないなら、尚更そうですね」
「そういう事だ。稟も、相手に気づいたからこその策であろう」
と、城門の辺りが、不意に騒がしくなり始めた。
「どうやら、出てくるようだな」
「ですねー。さてさて、稟ちゃんの策、どうなりますかね」
「うわっ!」
「いてっ!」
次々に上がる驚愕と、短い悲鳴。
「全員、武器を捨てろ! お前達は完全に包囲したぞ!」
凛とした、愛紗の声を合図に、あちこちで剣を投げ出す音が、続いた。
そして、夜が明けた。
「……こ、これは……」
「酷いものですな……」
「いくらなんでも、やり過ぎやで……」
確かに、酷い有り様である。
街には、猫の子一匹見当たらぬ。
「ガアー、ガアー」
烏だけが、不気味に鳴く。
そして、路上にも、家々にも、満ち溢れる民の亡骸。
その殆どが、衣服をどす黒く染めていた。
「お兄さん。生きている人は……見つかりませんでした」
いつもは飄々としている風も、流石に口調が沈んでいる。
「そうか。愛紗、捕らえた賊はどれほどいた?」
「はい。三千程です」
「……わかった。首領格の者のところに案内してくれ」
愛紗の案内で、賊が押し込められている蔵へ。
皆は、その後に続いて来ていた。
一人の男が、こちらに鋭い視線を向けている。
「貴様が、この者らの首領だな?」
「だったら、どうだというんだ?」
縛られているにも関わらず、男は不貞不貞しい態度を取る。
「この城には、いつやって来た?」
「へっ!」
「黄巾党のようだ
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