第二幕その二
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って」
「ないのね」
「どうしたものかしら」
彼女は言った。
「これから」
「そうね」
何時の間にか二人は手を組んでいた。そして互いに考え合う。
「とりあえずあの旦那様本当は私なんかどうでもいいのよ」
「ええ」
「あくまで御后様だけ、そこがまず肝心ね」
「そうよね、それをまず念頭に置いて」
「ギャフンと言わせたいけど」
「ギャフンていうよりゲフッて感じだけれど」
ムスタファへの悪口であった。
「まあね。あの体格だから。ともかくね」
「もう二度とこんな子供じみたことはさせない」
「それが問題なのよ」
「そうよね、どうすべきか」
二人は考える。だがそこへタッデオがやって来た。
「ああ、そこにいたか」
「叔父様」
「あれ、貴女は」
タッデオはズルマに気付いた。
「確か御妃様の」
「ズルマよ、宜しくね」
「ああこちらこそ。ところでな」
ふと話を変えてきた。
「ええ」
「わしは今度侍従長になったのじゃ」
「侍従長に」
「それを伝えに来たのじゃが」
「そうだったの」
「またえらい出世ね」
これにはズルマも驚いていた。
「いきなり侍従長だなんて」
「何でもたまたま空席でわしがアラビア語もイタリア語も話せるからな」
「へえ」
「あっ、タッデオさん」
そこへ侍従の一人が来た。
「こちらへ旦那様が来られますよ」
「こちらにですか」
「はい、ここは侍従長としてお出迎え下さい」
「わかりました。では」
「頑張って下さいね、叔父様」
「うむ、では」
一応畏まって態度をあらためる。そしてムスタファを迎えるのであった。
「ようこそこちらへ」
「大した用事ではないのじゃがな」
ムスタファはこう断った上で述べる。
「実はな」
「はい」
「イザベッラに伝えることがあったのじゃ」
「私にですか」
「左様、この度そなたの叔父が侍従長になったのじゃがな」
「それはもう叔父様から直接聞きましたが」
「まあわしから直接言おうと思ってな」
彼は言う。
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