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戦国御伽草子
参ノ巻
守るべきもの

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しゃって、さっと優雅に手を差し伸べて下さったのですわ。私、あんなに心優しい方にお会いしたのは初めてでした…」



「うんうん」



「それからは、数える程しかお会いできてはおりませんけれども、三浦さまは私のことをずっと見ていて下さったらしいのです。夢のようですわ!」



「うんうん」



 あたしは菩薩のような顔で相槌(あいづち)を打った。



 三浦と話が済むやいなや、由良はあたしのところに飛び込んできて、



「瑠螺蔚さまっ!三浦さまに求婚されましたの!」



 と、言った。



 そこまではよかった。うん、そこまではよかったのよ。



 そして、恥ずかしがって今にも走り去りそうな由良に向かって一言、



「その三浦ってどんな人なの?」



 と軽い気持ちで声をかけたのだ。



 これがいけなかった。



 由良が来たのが、大体酉の刻(十八時)で、今は子の刻(零時)。なんとかれこれ三刻も由良はあたしの部屋にいたことになる。



 しかも、ずーーーーーっと三浦の話ばかりなのだ。



 由良と三浦が出会ったのがいつとか、その時三浦はどんな格好をしていたとか、とにかく優しいとか、もうそんなのばっかり。



 由良もね、今まで誰にも話せなくてたまってた分あたしに喋ることが出来て嬉しいんだろうけど。それはわかる。



 でもねー。流石にあたしそろそろ寝たいんだけどなー。いつもは寝てる時間なんだけどなー。そろそろ丑三つ刻だし、物の怪とか出てきてもおかしくないんだけどなー。あたしは物の怪なんて怖くないけど、由良は怖くないのかなー。お腹すいたなー。どうせ起きてるなら夜食食べたいなー。でも自分で台所まで行ったら、夜半に台所を漁るハシタナイ前田の客人になっちゃうしなー。



「瑠螺蔚さま、その時の三浦さまとおっしゃったら、もうっ…。はあ」



「うんうん」



「私、あのような方に愛されてとても幸せですわ」



「うんうん」



「…瑠螺蔚さま?」



「うんうん。…って、え、なに?」



「今のお話、聞いてらした?」



「え、き、聞いてたわよやーねー。三浦の飼っている犬がどうとか…って話でしょ?」



「…瑠螺蔚さま?」



「え、なに?」



「三浦さまは、御犬など飼ってはおられませぬけど?」



「え?あはは、やだなー聞き間違えたのかしら。おほほほほ…」



 その時ざわざわと庭の葉が擦れ、由良はやっと時間の流れ
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