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王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の3:盗賊包囲
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てる選択をしたのであった。
 段々と近付いてくる敵方の轟きに胸中を震わせながら、男は村の反対側の出口へ向かって疾走する。しかし天の運は彼に味方しない。彼が逃げ出そうとした方向から土煙が迫ってくるのが見えてきた。それが先の戦闘で辛酸を舐めさせられた、私兵団によるものだと気付くのにそう長くは掛からなかった。村は騎馬の機動力という補いを得て、完全に包囲されていたのである。

「ま、回り込まれて・・・くそっ!?」

 男は直ぐに近場にある二階建ての建物へと逃げ込んだ。馬用の藁や、盗賊らが奪った食糧や物資の残りなどが此処に保管されている。一階の両脇には二階部分へ繋がる梯子が立て掛けられており、それぞれ独立した床板に繋がっていた。
 閉ざした扉越しに争いの声が響いてきて、扉をどんどんと叩いている。最期の戦闘が繰り広げられ始めたのである。即ちそれは、男の死が確定した事を意味した。

「ここまでなのか・・・俺は?」

 男は半ば呆然としながら、自らが末期に得た場所を見渡した。乾いた笑みを浮かべながらそれらを見ていると、倉庫の隅の方に、見慣れぬ袋が詰まれているのを発見した。
 男はそれに近付いて袋の口を開き、臭いを嗅いだ。思わず咽てしまうようなきついものであった。

「・・・ただで死んだりはせんぞ・・・!道連れにしてやる・・・!」

 これを使用すれば幾分か、まともな抵抗が出来るに違いないだろう。男は自棄となって己を奮い立たせ、袋を脇に抱えて最期の抵抗の準備を整え始めた。
 さて、村に突入した慧卓らであったが、矢張り馬上からの攻撃というのは圧倒的であり、残り僅かな賊を簡単に虐殺する事が出来ていた。元々数に劣り、士気にも劣る敵であったというのが、私兵団の壮健さを保障していたというのもあったが。篝火の残滓がある村の中央で、慧卓は提案した。

「ここで二手に別れましょう。俺は敵の首領を探します」
「私も御供を致しましょう」
「わかった。二人とも気をつけろよ。窮鼠が何かしでかすか分かったものでは無いからな」

 双方はそれぞれに兵を率いながら、二手に別れて疾走していく。アリッサらが向かったのは、未だ抵抗の激しい村の東部であった。幾分も経たぬ蹂躙劇であるのに、その場所においては中々に賊が崩れないようであった。
 実際にその場に到達して、アリッサは己の目で理解する。数人の盗賊が互いに互いを援護し合いながら、兵らの飽和攻撃に対し、かろうじて拮抗を保っていたのだ。

「・・・勇壮だな。末期くらい、私がけじめを付けてやるか」

 追従してきた兵士に他の地域の制圧を任せた上で、アリッサは馬を進ませる。彼女の存在に気付いたのか、道を占拠していたエルフの兵等が互いに言い合った。

『道を開けろっ、調停官様が通られるぞ!』『おい、そこどけって!
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