暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の3:盗賊包囲
[3/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の穏やかな表情が鳴りを潜め、厳しき統治者の顔となっている。それだけである程度答えは予測できたのだが、一応慧卓は問う。

「この状況を如何なさる御心算でしょうか、ソ=ギィ様。敵はかなり切羽詰っているようですが」
「他の方々と熟考に熟考を重ねた結果をお伝えしますわ。我が軍はこれより総攻撃を開始します。人質の救出は、攻撃と平行して行います」
「・・・宜しいのか?彼らが無事生還できる保障は、ほとんど無いぞ?」
「生還させます。私の私兵団は何人を相手としても、どのような状況であっても妥協はしませんわ」

 遂に軍の指揮官が重い腰をあげたようだ。アリッサは漸くかといわんばかりに力強く頷いた。これで思う存分、盗賊の残党を討ち果たせるというものである。

「アリッサ様、ケイタク様。もう一度私兵団と共に攻撃に加わっていただけますか?私達は正面より突入致しますので、御二人は村の後方から強襲していただきたいのです」
「なるほど。敵の逃走を今度は許さぬ御心算ですか」
「はい。賊軍は一兵たりとて、生かして帰す事はできません。ここで討ちます」
「承知致した。では、早速準備致しましょう」
 
 慧卓とアリッサ、チャイはそれぞれの馬に乗って、私兵団の面々が待機する場所へと駆けていく。陣を形成する兵等の視線を受けながら、アリッサは懸念を抱いた。
 
(賊が来ているのは、ここだけでは無いだろうな。・・・向こうは対処出来ているのだろうか)
 
 森に控えている仲間達を心配に思う。早い所この難事を片付けて、賢人等の協力を取り付けて森へ帰参したい。アリッサはそういった思いを強くさせながら、馬に手綱を打たせた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 賊の挑発から一時間後、遂に趨勢が結する時が来た。村を半包囲していた軍の兵が、掲げていた軍旗を二振りする。それが合図であったのだろう、兵等は武具を携えて村へ行進していく。

「・・・終わったな。見ろ、仕掛けてくるぞ」
「っ!?」
「三方から圧殺する気だ。これは負けたな」

 低く響いてくる敵の足音に臆しながら、指揮官と、彼に反駁していた男が敵を睨んだ。男は慌てて仲間に呼び掛ける。

「てっ、抵抗しろっ!!!敵を生かして帰すなァァッ!!」
「所詮は我等は盗賊。エルフであろうとなかろうと、こうなる定めだったのだ」
「何を達観してやがる!お前っ、武器はどうした!!!」
「向こうに用意してある。が、ここで戦う気はない。逃げるならさっさとしろ。俺は逃げるぞ」

 指揮官たる責務を放り捨てて、エルフの男は逃走を選んだ。仲間の呼び止めも怒りにも脇目も振らず、予め用意していた護身用の剣、男が村中を捜索した中でもっとも状態が良いものを掴んで村の反対側へと走る。それこそが正しい道だと信じて、仲間を見捨
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ