第二十三話 少年期E
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うと心がけてもいた。今を真剣に生きることを俺は選んだのだから。それでも、やはり寂しさを拭えないときはある。
いつか、笑って懐かしいと心から思える日が来るのだろうか。それは正直わからないが、こればかりは俺の気持ちの問題だと思った。時間が解決してくれることを祈るしかない。まだこの世界に来て6年しか経っていないのだから。
あまりこのことに関して意識しすぎないようにしよう、と結論付けて俺は席に座りメニューを開く。居酒屋風の店なのに、なぜか大量の定食が載っているというアンバランスさに吹き出しながら、無難に『鳥つくね焼き定食』を選ぶ。日本の料理が数多く載ってあり、異世界なのに本当に不思議だ。
「初めて見る料理もありましたが、民族料理店なんですか?」
「そのような感じですね。ここの料理や店内は、異世界からミッドに持ち込まれた文化だそうです。ミッドは他世界から多くの移住者が来られますから、このような店は結構あるんですよ。故郷の味を忘れないように……と」
「なるほど」
父さんが質問した内容に丁寧に答えてくれた店員さん。さっきまで軽く意識がとんでいたから気づかなかったが、クーポン券をくれたお兄さんだ。お兄さん自身はこの店の元となった世界とは関係ないみたいだが、この店で食べた味に惚れたらしく働いているらしい。
俺は故郷の味を褒められてなんかうれしかったし、父さんも店員さんの話に耳を傾けていた。注文を聞き、去っていった店員さんの後には、店員さんがおいしいと語った料理を楽しみに待つ男2人。あのお兄さんできる人だわ。
「プレシアやアリシアは元気にしているか?」
「うん、元気だよ。規則正しい生活もしているし、アリシアも母さんと一緒にいれて喜んでいるしね」
それほど時間もかからずに来た料理に箸を伸ばしながら、お互いに近況を報告し合う。父さんは箸に慣れていないからか若干手元がおぼつかなかったが、おいしそうに食べている。定食は結構本格的だ。ハンバーグ型のつくねの上にはとろみがつけられ、細ねぎが散らされている。
口に入れるとつくねからじゅわと肉汁が溢れ、さらにチーズが入っているのかとろりとした触感が食欲をさらにそそらせる。同じ皿の上にあったアスパラガスも柔らかく茹でられており、少量のレモン汁もつくねと合わさり相乗効果を生んでいる。うん、これはうまい。
「不自由はしてないだろうか。あとお金に困ってはいないか?」
「心配しすぎだよ。父さんからの養育費も十分もらっているし、母さんもかなりの高給取りだからね」
『それに事故の裁判で賠償金をかなりもらえるみたいですから、さらに潤います』
長い拘束から解放されたとはいえ、まだ完全に俺たちは自由というわけではなかったりする。裁判のどたばたが全部片付き、管理局からの手続き
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