第一幕その五
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りなの?」
「どうするつもりだって言われてもな」
ハーリーはムスタファが夢中でエルヴィーラに意地悪をし、エルヴィーラがそれに塞ぎ込んでいる端でズルマと話を続けていた。
「旦那様のあれは殆ど日常だし」
「困ったわね」
実は二人もムスタファのこの子供っぽさに困っていたのである。
「ではエルヴィーラよ」
「はい」
「そなたはどうするつもりなのじゃ?」
「どうするつもりとは」
「わしは妻は一人じゃ」
ムスタファはまたしても意地悪そうな笑みを浮かべてエルヴィーラに言った。
「一人。それは知っておるな」
「はい」
それに力なく頷いた。
「ではここで妻を迎えたとする」
「私は」
「わしが後一回じゃな。あれを言えば」
「それで」
「イタリア男の嫁になる。どうじゃ」
「それは・・・・・・」
顔が真っ青になって何も言えなくなる。その困った様子を見るのがムスタファの趣味なのである。
「旦那様もね」
そんなムスタファを見てズルマは言った。
「あれさえなければね」
「そうだよな、凄くいい人なのに」
ハーリーもそれは同意であった。
「ささ、あのイタリア男を呼んでまいれ」
二人をよそにムスタファは従者達に言う。
「エルヴィーラに会わせる為にな」
「あれで御妃様がいないと凄く困るのに」
「この前メッカに行かれた時は凄かったんだって?」
「そうよ、もうずっと塞ぎ込んじゃって」
ズルマはその時のことを言いはじめた。
「何もできなくなって。それで御后様が帰って来られたら大喜び」
「難儀だな。何で素直になれないんだか」
「そういう人だからね」
「それでじゃ」
ムスタファはイザベッラに声をかけていた。チラリとエルヴィーラを見ながら。
(あら)
その目の動きにイザベッラも気付いた。
(この旦那様あの奥方に御執心ね)
いい加減誰にでもわかるものであった。わかっていないのは当人とエルヴィーラだけである。エルヴィーラにしろ深窓の令嬢なのかどうにも鈍かった。
「して娘よ」
「イザベッラでございます」
イザベッラはムスタファに一礼して名乗った。
「うむ、ではイザベッラよ」
「はい」
「ここに呼ばれたのは何故だと思うか」
「さて」
まずはとぼけてみせた。
「旦那様の御加護でしょうか」
「確かにわしは慈悲深い」
「自分で言わなければね」
「完璧なのにな」
ズルマとハーリーが後ろで突っ込みを入れる。
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