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アルジェのイタリア女
第一幕その四
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でイスラム教徒に」
「その通りだ、イスラムはいいぞ」
 満面に笑みを讃えながら言う。
「皆平等でアッラーが与えて下さるものもいい。奥さんは四人まで持てる」
「四人まで」
「もっとも公平に愛さないといけないけれどな。それでも四人も持てる」
「それはいい」
「しかもレディーファーストだ」
「本当ですか!?」
 女達がそれを聞いて驚きの声をあげる。
「キリスト教よりずっとな。アッラーは女性も護って下さる」
「それは素晴らしい」
「けれどお酒は」
「豚肉も」
「どうしてもそれ等を口にしたいか?」
 それを問うとであった。
「はい」
「やっぱり酒と肉は」
「アッラーよ赦し給え」
 彼は突然そんなことを言い出した。
「何ですか、それ」
「酒を飲む前にこう言えばいいんだ」
「それでいいんですか」
「そうだ、アッラーは心優しき神、赦して下さる」
 こう述べた。
「それなら何の迷いもない」
「一日五回の礼拝もそれだけいいのがあれば」
「是非イスラムに」
「アッラーよ」
 こうして上手い具合にイスラム教徒に仕立てあげていった。実際にイスラムは他の宗教も認めているが同時にムスリムになった場合の特典も見せて勧誘していたりする。しかもそこには嘘偽りはなかった。王侯も乞食も同じイスラムなのだ。しかもムハンマドの考えの影響でイスラムは女性の権利に関してはこの時代極めて進んでいた。ムハンマドはフェミニストだったのだ。酒も豚肉もある程度大目に見られた。そうした宗教であるから爆発的に広まり大きな勢力となったのである。ただ単に大きくなったのではないのだ。
「何かあっちは騒がしいね」
「フン、私にとっては関係ないことだわ」
 イザベッラは改宗する者達に背を向けてこう言った。
「じゃあ行きましょう」
「行くしかないんだね」
「そうよ、行かなきゃどうにもならないのよ」
 そしてまた言った。
「何事もね」
「わかったよ、それじゃあ」
「ええ」
 二人はハーリーについてその場を後にした。荷馬車に入れられて宮殿に向かう。とりあえず港を後にするのであった。

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