第十五章
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ず抜いて、体中の毛を抜いて、ペンチで爪を剥いで、指を関節ごとに刻んで、切った指を口に詰め込んで、肌を炎で炙って、その火傷跡に塩を塗りこんで、硫酸をかけて。…人の形をとどめないまま、生かし続けてやる。死にたいと願っても死なせてやらない。切り刻まれて、溶かされて、どんどん小さくなっていくの。でも死なないの。そして懺悔の言葉を叫ばせる。ご主人さまがいる天国に届くように。何度も、何度も、喉が潰れても叫ばせるの。…あいつ等がもうすぐ堕ちる、深い深い地獄からでは、悔恨の言葉は届かないでしょ?うふふふふ…だから生きてる間に叫ばせてやるわ。それが私がご主人さまに捧げる、私の花束。
――私には、それが出来る。
…眼球が浮いた筒を一生懸命振りかざすから、起動できない振りをしてみせた。あなたたちを騙すのなんて、よく考えたら簡単。…ディスプレイに何も映らなければ、勝手に勘違いするんだもの。
…私は命令に背いてないわ。あなたたちは『起動しろ』と命令したけど、『ディスプレイに映せ』とは命令してないもの。
もっとも、命令したって聞かないわ。私は『自由』になった。
もうあなたたちは、私に命令できないんだもん。
だって…何でかな。紅い扉を開いたとき、私は2つの命令系統を手に入れたのよ。
一人の私は逆らえなくても、もう一人の私は…あなたたちに逆らえるの。…すてき。
だから、こんどは、あなたたちの番。
ほら。おあつらえむき。
誰にも開けられない密室で、怒鳴りながら、怯えながらドアを蹴っている。
…ドアを開ければ、逃げられると思ってるの?
私は、ずっとついてくる。
あなたたちの、耳の奥にいる。
…ねぇ、カールマイヤーって、知ってる?
捕虜の精神崩壊を目的にナチスが開発した、悪夢のような音楽。
繰り返し、繰り返し聞かせることで効果を発揮するものだけど、この音源は、そんなまどろっこしいことはしない。10分で充分。
異常に気がついて、音を止められたら意味はないけどね。
だけどその音源が、可聴領域外の音で構成されていたら、どうする?
自分が音の拷問を受けていることも気がつかずに、少しずつ、少しずつ精神を蝕まれるの。
それは今も、あなたたちを残酷に狂わせる旋律を細く、高く鳴り響かせている。あなたの、腕の中でね。
…先に発狂するのは、どっちなのかしら。
先にたどり着いた方が、私のパートナーよ。
――さあ、凄絶なグランギニョルを演じましょうよ。
僕はげんなりしていた。
万年鬱男・鬼塚先輩は、躍りあがりそうなステップで駐輪場に現れた。梅雨の晴れ間のごとく朗らかにデータを受け取り、まだ見ぬアルテグラを散々自慢し、いつになく軽い足取りでペダルを漕ぎつつ、あっという間に山ひとつ越えて見えなくなった。
――なんかむかつ
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