第十四章
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だと出られないんじゃないかな」
「うーむ…自転車なら抜けられるか…」
「山道だし、距離も随分ある。女の人には無理だよ」
僕らが額を寄せ合って深刻に相談している時に、背後からけたたましい笑い声が響いた。
「あははははははは!イカみたい、こいつ干しイカみたい!!」
浴衣の乱れも気にせず、のた打ち回って笑っている。どんだけ干しイカが面白いのだ。
「…流迦ちゃん、さっきから何を見てるんだ」
紺野さんが身を乗り出した。
「さっき、そこで自転車で接触事故を起こした奴。病室のライブカメラに映ってるの!」
「ライブカメラ…お前、まだそんなことしてるのか!他人の病室に勝手にカメラ設置しちゃ駄目だと、あれほど言っただろう!」
…天才的頭脳に小学生の分別だ。この人と付き合っていくのは本当に大変だと思う。…でも僕もその干しイカに似ているという被害者が気になり、ディスプレイを覗いてみる。
なにやら黄色がかった不鮮明な画面の中央に、みすぼらしい風体の男が横たわっていた。さして気分が悪そうでもなく、すでに病院食をコメ一粒残さず平らげ、寝そべって漫画を読んでいる。『ラッキー、タダ飯ゲット』くらいにしか思っていない様子だ。
「画質悪いなぁ…この、独特のしなび感が干しイカ的に見えなくもないけど…」
「…わっ!!」
耳元で柚木が大声を出した。驚いて肩をすくめて振り返る。
「なんだよ!」
「干しイカじゃないよ!これ…鬼塚先輩じゃん!!」
「え!?」
干しイカの傍らには、見覚えのある色の自転車部品が数点、転がっていた。
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