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ワンピース〜ただ側で〜
最終話『君とともに』
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言ったように聞こえたが俺の聞き間違えか?」
「……」

 問いかけられたのそ言葉に耳を貸さず、ハントは静かにその場で拳を振るった。

「?」

 意味がわからずに首を傾げる彼らをよそに、そっと呟く。

「魚人空手陸式『若葉瓦正拳』」

 そしてその瞬間、大気とそれに含まれる水分が爆発した。
 魚人たちがまるで打ち上げ花火にでもなったかのように上空へと吹き飛び、水面へと浮かんでいく。次々とあがる水柱を見つめながら、ハントはアーロンをにらみ返し、告げた。

「言ったけど、それがどうした。バカ魚」

 意識があるのはただ標的にされなかったアーロンのみ。アーロンが信頼する幹部たちも皆一様に海に浮かんでいる。悲鳴すらあがらなかった同胞たちの末路に、アーロンは青筋を浮かべながらゆっくりと立ち上がった。

「てめぇ、どうやら俺に殺されてぇらしいな」
「……」

 それを、ハントはいやに冷静な目で見つめていた。
 怒りが我を通り越して冷静になっているとかではなく。ただ単純に見極めがついたからだ。

 ――こんな奴に。

 過大評価していた。
 それが、目の前の魚人に抱いたハントの正直な感想。
 おそらく、いや確実に。
 ハントには一撃で目の前のギザ鼻を葬れる自信がある。
 体からあふれる風格、その一つ一つの動き、師匠である魚人ジンベエに比べて話にすらならないレベル。

 ――せめてあと一年、はやくこの村に帰ってきていれば。

 ただそう思う。
 きっとナミが受けた絶望はもう少し軽かった。
 麦わらたちとの邂逅、それを裏切らなければならなかったナミの気持ち、そして海軍に奪われた目標額寸前の金。
 必然的に震えてしまう拳に、アーロンはなにを勘違いしたのか実に盛大に笑う。

「シャーッハッハッハ! 今更俺に恐怖してももうおせぇ、てめぇはやりすぎだ、絶対に殺してやる」

 すべてはこの男のために。
 こんな弱い魚人のために。

「おいバカ魚。集中しろ」

 相手だけではなく、自分にすら怒りを感じているハントが短い言葉をつきつけ、それにアーロンの機嫌が一気に急降下。睨み殺さんばかり視線をハントへと送りつける。

「てめぇ、次に俺をバカ魚と呼んでみろ。この世に原型をとどめておかねぇくらいにぐちゃぐちゃにしてやる」
「……」

 ハントはスイッチを入れる。
 武装色の覇気で拳を固め、全力で叩きのめすという意志を、示す。

「っ」 

 それを、やっとアーロンは感じ取った。
 ハントからあふれるなにか。人間のことを下等生物だと見ているアーロンからしても絶対強者の品格すらある。
 捕食動物としてのプライドといえばいいのだろうか。いつもは相手を躍らせる側であるアーロンは躍らせれる
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