暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
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も、気配でわかる。だが、レンに背後からの攻撃を決めた相手にそれはなかった。
まるで瞬間移動でもしたかのように、気配が突如何もないところから現れたのだ。
レンの腹から貫通して突き出していたのは、大振りの
短剣
(
ダガー
)
の刃だった。
ちらりと視界の隅に浮かぶHPバーを見るが、フル回復していたそれの枠線が黄色く点滅していた。
麻痺毒。
しかも、かなり強い毒なのか指先がピクリとも動かない。たしなみ程度とはいえ、《耐毒》スキルを上げているレンの体をここまで戒めるとは、並大抵の毒ではない。
───誰がこんな真似を……
レンは必死に顔を背後に向けようとするが、いかんせん毒が強すぎる。
首が動かせず、背後が見えない。
この場でレンの背後を見れるのは、マイとカグラだけだが、マイのほうはレンがあの狂った時間から生還するのと同時に力を失ったかのように地面に臥せっている。
若干、と言うかかなり心配なのだが規則正しい呼吸も聞こえてくるので、きっと大丈夫だろう。
そこまで思った時、頭上、つまりレンの背後から殷々とした声のいらえがあった。
「いまだ発見されていない、レベル10の毒だ。気分はどうかね?少年」
深々とした特徴的なボイスエフェクト。一瞬、誰だコイツ?と思ったが、ある出来事が脳裏に閃き、戦慄する。
そもそもの発端。レンが狂気に走った、始まりの出来事。
アインクラッド第二十五層、攻略で初めてのクォーターポイント。そのボス攻略戦。一匹のちっぽけな黒猫がこの魔城から消え去った、あの悪夢のような闘い。
そして、レンを狂気へと誘ったあの漆黒のタキシードを着た男。
カーディナル
このSAOを支配し、操作しているシステム。そしてその自我プログラム。《鬼才》小日向相馬が無から創り出した、狂気の産物。
声は続く。
「おぉ、動きづらかろう。解き放ってやるぞ、少年」
そう言った言葉の後、体から毒が消え、体が自由になる。自分から仕掛けておいて、まったく勝手なものである。
レンはゆっくりと改めて後ろを振り向く。
考えていた通り、レンの背後の空間には真っ黒なタキシードを着た男が佇んでいた。
その口元には、毒々しいまでの完璧な笑みが浮かんでいる。
「久しいな、少年」
「…………ひさしぶりだね、おじさん」
射殺さんばかりに鋭いレンの視線を空気のようにスルーし、カーディナルは少し離れたところに、所在なさげに突っ立っていたカグラのほうにちらりと視線を向ける。
カグラは条件反射のように、地面に顔をこすり付けんがごとく跪く。
「すみません我が主様。わざわざご足労を………」
見ているこっちが痛々しくなるような声を出すカグラに、カーディナルは慇懃に
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