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スーパーヒーロー戦記
第57話 戦闘マシーンに人の心を
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。初めて会った頃とは違い何処となく表情に丸みが出来ていた気がし始めていたのだ。
 これも一重にフェイトの努力の賜物とも言えた。そんなある日、フェイトは鉄也に呼ばれた。

「どうしたんですか? 鉄也さん」
「少し話がしたくてな」

 珍しかった。今まで鉄也の方から話を振ってくる事など無かったからだ。それを聞いたとき、フェイトは今までの苦労がようやく実ったと内心拳を握り締めて喜んでいた。

「ある場所に行きたい。ついてくるか?」
「はい!」

 強く頷く。そしてフェイトを乗せたまま、ブレーンコンドルは飛び立った。向った先は小さな離れ小島であった。誰も住んでおらず、あるのと言えば捨てられた廃屋が一軒ある位の寂しい場所であった。

「あの……此処は?」
「俺は昔、此処で所長と過ごしたんだ」

 廃屋の中に入りながら鉄也は語った。それは、幼い頃鉄也が経験してきた過酷な人生であった。

「フェイト、お前に親は居るか?」
「えっと……血の繋がりはないですけど、優しいお母さんとお兄ちゃんが居ますよ」
「そうか……」

 ふと、鉄也が寂しそうな顔をした。

「あの、鉄也さんにご両親は?」
「居ない……孤児だったんだ。俺は」
「あ……」

 それを聞いたとき、フェイトは知った。鉄也が何故皆と輪を作りたがらないのかを。

「生まれて間もない頃、俺は孤児院に居た。捨てられたのか、はたまた両親が死んで預けられたのか、真相は分からない。只、俺が過ごした孤児院での生活は辛かった」

 鉄也は11歳の頃まで孤児院での生活をしていた。其処では満足な食事が行えるだけでも有り難い位の生活であり、娯楽も何もなく、毎日付近の子供達からの酷い虐めにあっていた。
 それが原因で鉄也は今の性格になったと言える。

「あの時は、毎日毎日壁や地面に知る筈もない両親の顔を書いていた。書けば思い出せるかと思ってな」

 フェイトは黙ってそれを聞いていた。嫌、何もいえなかったのだ。
 辛い過去だったからだ。

「そして、俺が11になった時、今の所長に拾われ、此処に連れて来られた。其処で俺はグレートマジンガーの操縦者になる為に、そして……戦闘マシーンなる為に地獄の特訓を強いられる事になったんだ」

 此処で行われていた特訓はそれは過酷な物でもあった。心を捨て、戦士となる為に毎日死に物狂いの特訓をさせられていた。逃げようとしても其処は海の荒い離れ小島。とても泳いで逃げれない。
 鉄也は生き残る為に必死にその特訓をこなし続けた。その辛い過去がまた、鉄也の心を傷つける要因だったのかも知れない。

「あの時は、正直所長を恨みもした。鬼か悪魔のようにも思えた。だが、長い間あの人と過ごしている内に、何処か暖かみを感じるようになったんだ」

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