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ボリス=ゴドゥノフ
第四幕その四
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それを聞き満足そうに頷いた。
「それでこそ皇子です」
 マリーナはそんな彼を恍惚とした眼差しで見詰めた。そこには皇帝の冠があった。
「栄光と強大な権力を求められるその凛々しい御姿こそが貴方には相応しい」
「そうか」
「はい。それこそが夜のしじまにも昼の太陽にも映えます。そんな貴方だからこそ心からお慕いするのです」
 彼が権力に燃えているからこそ。今彼女は彼を権力と見ていた。
「その言葉、偽りではないな」
「はい」
 彼女は頷いた。
「どうして。嘘なぞつけましょうか」
「わかった。では行くぞ」
「はい」
「モスクワへ。栄光と繁栄が我等を待っている」
「そして玉座が」
 彼等は抱き合い共に野望を成就させることを心から誓い合ったのであった。今彼等はそうした意味で完全に結ばれたのであった。
「これでよし」
 その二人がいる部屋の扉の向こうで呟く声がした。ランゴーニであった。
「明日からロシアは我々の手に落ちる。このローマ=カトリック教会の手に」
 彼にもまた野心があったのだ。教会としての。
「その為には何でも使わせてもらおう。駒としてな」
 最後に邪な笑みを浮かべた。そして扉から離れ暗い闇の中へとその姿を消していった。
 次の日の朝早くグレゴーリィ率いるポーランド軍は進撃を開始した。行く先は最早言うまでもない。彼等は今野望に燃えていた。そしてそれを阻もうとするものは全て焼き尽くさんとしていた。ロシアは戦乱の炎をも受けようとしていたのであった。

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