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東方守勢録
第十三話
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当たりを見渡そうとした兵士は、なぜか急に悲鳴をあげて倒れてしまった。

それだけではない。次々と兵士が悲鳴を上げながら倒れていく。一人一人確実に…


「絶対に少年の攻撃だ!気を引きしめろ!!」

「りょうか……! あぶない!!」

「えっ……」


いきなりそんなことを言われた兵士は、無意識に後ろを振り返る。

するとそこには…



「うわあああああああ!!!!!!!」



と叫ぶ俊司の姿があった。




ドゴォ!



「うぐっ!?」


何十倍にも強化された俊司の蹴りは、無防備だった兵士のわき腹を貫く。

重たい衝撃が一瞬で体内を駆け巡り、兵士はそのままゆっくりと地面に倒れていった。



(まだまだ……まだまだ……)


倒れていく兵士をしり目に、俊司は動き続ける。


「落ち着け!敵はたった一人なんだぞ!」

(まだやれる……まだやれる……)


これだけの人数差をスペルカード一枚で覆されていく。革命軍は徐々に隊列を乱し、崩壊し始めていた。


(あと少し……あと少し……逃げるな……逃げるな……)


俊司は心の中で自分自身に声をかけ続ける。少しでも気を抜いてしまえば恐怖に飲み込まれ、その場から逃げだしそうになってしまう。

微かに残っている思考だけを頼りに、俊司は動き続けていた。


「くそおおおおおおお!!!」

「ぐわっ」


一心不乱に行動し続け…









ついに残り五人ほどにまでこぎつけていた。









(いける……もう少しで……)


「ぐはっ」


(後4人)


「あぐっ」


(後3人)


「ごふっ」


(あとふた……!?)


勝てる……そう思い始めていた時だった。


「止まれ少年!!」


一人で無双を続けていた少年は、その一言でその場に止まってしまった。

もちろん、スペルカードの効果が終了したわけではない。しいて言えば、もう少しで全滅だった革命軍に援軍が到着しただけ。もちろん、いまの俊司なら全滅させることもできる。

だが、少年は止まらぜるをえなかった。


「……」

「わかってるだろう少年……さ、おとなしくしてもらおうか……さもないと……」









「このメイドが死ぬことになるぞ?」









男のすぐ横には銃を突きつけられたメイドが、こっちを驚いた様子で見ていた。もちろん俊司はそのメイドのことを知っている。

思考が定まらない中、俊司は彼女の名前を無意識に呟いていた。



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