弐ノ巻
ひろいもの
4
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
「離してよ、離しなさい、発六郎!」
ばたばたと暴れていると、発六郎が舌打ちすると共にあっさり両腕を押さえられて、そのまま倒された。あたしは身動きがとれなくなってしまった。
「こんなことを言っても信じられないと思うが、俺はもうおまえを殺そうとなんかしない。今まで俺がしたことを許せとは言わない。ただ、話を聞いてくれ!そしたら、そのあとはもうおまえの好きにしてくれて良い。俺の命を以て贖うから」
あたしは藻掻いた。
「甘えたこと言ってんじゃないわよ!命を以て贖う?命は、命で贖えることなんて絶対に、ない!あたしはあんたとは違う。後悔してるなら、生きなさい!生きて償うのよ!」
目と鼻の先で、発六郎の顔が歪んだ。
「…おまえは、強いな」
強い?あたしは強くなんてない。
発六郎に向ける感情も、汚い気持ちも、どうしていいか持て余しているのに!
「俺の名は、村雨発六郎速穂だ。村雨家の忍だ」
あたしは息を呑んだ。隠密が自ら正体を明かすなど、どうかしている。命に関わるというのに。
それとも、これも罠?
けれど発六郎の瞳に嘘はない。
あたしは戸惑いながら口を開いた。
「村雨の、忍がどうして…個人の私怨じゃなくて、村雨家が、前田家をどうにかしようとしているってこと?…まさか」
喉がからからに渇く。なに、これ。この話、本当だったら途轍もない大事なんじゃ…。
父上は知っていたの?知っていたけどあたしたちには言っていなかった?それとも知らなかった?わからない。いや、冷静にならなきゃ…まだ本当の話かわからないんだから!
心を読んだかのように発六郎が続けた。
「おまえは知らないだろうが、そもそもの原因は、前田家の現主だ」
「…父上?」
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ