第10話『怒りの矛先』
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探している」
「……?」
聞こえてきた声に、ハントはさらに眉を深く寄せる。
――犯罪者……ナミを?
おかしいことだ、実におかしいことだ。
なぜ彼らはナミに用があるのか。なにをもって犯罪者といっているのか。そもそもナミを犯罪者と呼ぶ前にアーロンをどうにかするのが海軍の仕事ではないのか。
「……待て……まてまて、まて」
一人、ぼそぼそと呟き、ハントの脳内シナプスがひらめき、連鎖する。
ハントは原則海賊が嫌いだが、海軍も嫌いだ。それは彼の経験から来るものだが、だからこそ閃いた。
なぜ彼らの船は沈められなかったのか。少し前に一隻沈められた船があったにもかかわらず、だ。
ナミを犯罪者と呼ぶ理由。もっと大きな犯罪者、アーロンがいるにもかかわらず、だ。
そもそもどうやってナミの情報を手に入れた。
それがありえない。ナミに財宝を盗まれた海賊がナミのことを言うか。答えは否。海賊である自分が金を盗まれたなんていうはずがないし、言っても海軍だって信じない。
――ナミの手元にあるのは海賊から盗んだ金9300万ベリー……ってか?
「……実にいい度胸をしている」
それが誰に向けられた言葉なのか、ハントが彼らに背を向けて歩き出した方向を見れば自ずとわかるというものだ。と、そんなハントに声をかける人物がいた。
「お、お前ぇ!」
「ん」
不機嫌なオーラを隠そうともせずに振り返り、一転して驚きの表情に。
「どうしたんだ、そんなこえー顔して」
「麦わらの……お前、ここに来てたのか」
「ああ、なんか散歩してたらよ」
「そうか、ナミはどうだ?」
「なんか機嫌悪くてなー」
「はは、俺も怒鳴られたよ」
麦わらの仲間を見るような目とハントの哀れみの視線が一致して、なぜか肩を組む。
「航海士、ナミで後悔しないんだな? ……こうかいしだけに」
「あっはっは! なにいってんだおめぇ」
しょーもない駄洒落に自分で落ち込むハントだが、麦わらの男はやはり笑いながら強い言葉で、それに返す。
「俺はあいつがいいんだ」
その言葉に、ハントは微笑を浮かべた。
「そっか。ナミならこの村のはずれににいる。まだ機嫌悪そうだったけど声かけるなら行ってみたらいい」
「お、サンキュー」
「すまん、俺は少し急いでるから先に行くな?」
「そうなのか? アーロンってやつのとこか?」
「ああ」
「手伝――」
「――いらないって」
「なんだよー」
拗ねたように言う麦わらの男に、ハントは笑う。
「じゃあな」
「おう」
麦わらの男へと背を向けて、ハントはまた歩き出す。その背中に、同じく背を向けて歩き出そうとしていた麦わらの男が慌てて振り返った。
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