第10話『怒りの矛先』
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前のことを知っている。だからいいたくて仕方がなかった。
「美人になったな、本当に。驚いた」
俺の本心。
ただ、その言葉が彼女のスイッチに触れてしまった。
「っ女を口説く暇があるならアーロンに殺されないように金でも貯めて家でびくびくしてろ! 第一私には先約がいる! さっさと出てけ!」
せ、先約……だと?
「ノジコ、また来る」
「ちょっと、まちなさいってば」
家を出た玄関で服をつかまれた。
「気づかないのは仕方ないでしょ! 別に拗ねなくっても」
「違う」
「違う? だってあんたすごく不機嫌そうな顔してるわよ」
「本当に違うんだ……いいからナミを見てやってくれ。俺はとりあえずゲンさんのとこに行って服もらってくるから。また後で寄る」
「?」
まだ文句を言ってくるかと思ったノジコが、何も言わずに首かしげながらしぶしぶ家に戻る。俺の意志が伝わったのかもしれない。
本当に気づかれなかったことに関して、ショックを受けているわけではない。ナミの中に先約がいることはショックだったけど、今はそれにショックを受けていられる場合でもない。
その辺を考えるのは後だ。
後でいい。
そう、どうでもいいことだ。
そんなことよりも大事なことがあった。
自然と拳を握り締めてしまう。
予想以上にナミは追い詰められていた。
それが、俺には何かはわからない。でもあいつが楽しく生きていればあんな風な、あんな不安定な姿にはならないはずだ。
アーロンを潰す。
今は何よりもそれにしか目が入らない。
「行くか」
……あ、やべ。甚平の中に着る服だけゲンさんのところに行って貰っていこう。
アーロンが怖いとか、そういった類の感情は気づけば一切なくなっていた。
「少し時間くったな」
ゲンゾウの家を出て、ゲンゾウとベルメールが追いかけてこないことを確認したハントが苦笑して呟いた。
ゲンゾウがもっていた黒の服の上下。駐在スタイルの服だが、それを着て、その上から灰色の甚平を羽織る。
ココヤシ村を故郷とし、ジンベエの下で育ってきたハントにとって、これほど嬉しい服はない。
――おかげで、気合が入った。
「さて、行くか……狩りのじか――ん?」
ハントの目つきが変わり、ほんの一瞬だけだがたしかに猛禽類を思わせるようなそれになった。だが、本当に一瞬だけ。すぐに気になるものを見つけた彼の目はいつものように柔和なそれへと変化する。
「海軍?」
――ノジコが海軍の船が沈められたって言ってなかったか?
実におかしな光景だ。
彼らはまっすぐにゲンゾウの家へと向かう。
「チチチ、私は海軍第16支部大佐ネズミ。ナミという犯罪者を
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