第10話『怒りの矛先』
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子を犯罪者にしようとしたくせに罪意識ゼロだよね!」
なつかしい、この感覚。
実に楽しい。
「ん、とりあえず行って――」
「――ただいまー」
「あら、おかえんなさい。どうだった?」
……誰だ。
いや、待て、誰だこの美人。
いや、わかる。わかるが認めたくない。
「それがよくわからないの。岸がえぐれてたけどなんの痕跡もなかったし、硝煙のにおいもなかった。ベルメールさんに来てもらえばよかったかも」
さっきただいまって言ったぞ。
この家の人間で、この髪色。まず間違いなくノジコだ。
「それは残念ね」
肩をすくめて、明らかにやる気のない返事。ただノジコもそれを予想してたらしく、その態度に対して何の反応も見せずにこっちに視線を送ってきた。
「で、こっちの人は? 今度はベルメールさんが珍客を連れてきたの?」
「はは、そうね。珍客だわ」
……しかし、誰も俺のことに気づかないもんだな。少しショックだ。
笑うベルメールさんに批難じみた目をしてしまうのは許してもらいたい。
「……俺ってそんなに変わった? 俺は一発でみんなのことわかったんだけど」
「あんたはわかって当然。私たちに会いに来てるんだから。でも私たちはあんたのこと死んだって思ってるの。ふらっと帰ってくるなんて思ってないの。おわかり? 気づいたほうが怖いでしょ」
「……それはまぁ、確かにそうだ」
「? なに、ベルメールさんの知り合い?」
く、まだ気づかないなんて。俺の心が折れそうだ。
「……俺だよ、俺」
オレオレ詐欺みたいだな。
どうでもいいことを言いながら自分の顔を差す。
「?」
ノジコが俺の顔をじっと見つめること数秒。少し目を見開いた。それから目をわずかに潤ませて、やっと気づいたらしい。
「あんた!」
「おう」
胸を張る。
さぁ、俺の名前を言ってみろ!
「ベルメールさんの元旦那さんね!?」
「違うわ! とんでもないところに着地すんな! 俺だよ、ハントだよ! 絶賛死亡説が流れてたハントだよ!」
「途中でわかってたわよ、いちいち大声出さないでくれない? もう子供じゃないんだから」
「わかってたのかよ! ベルメールさんといいノジコといい一回ボケんと気が済まんのか! っていうか大声出させてんのはそっちだ!」
つ、疲れる。
こういう感覚が久しぶりすぎて実に疲れる。
いわゆるたのなつかれるってやつだ。
楽しいと懐かしいと疲れるを混ぜてしまうくらいだ。3つもあわせたのは初めてだ……自分で表現しといてなんだけどわかりにくい、これからは2つまでに抑えようと思う。
「しっかし、よく生きてたわねあんた」
「あー、まぁ俺も色々と奇跡的だったとは思
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