第10話『怒りの矛先』
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「ま、あんたならいいかな」
そうして、俺は聞くことになる。
これまでのみんなの辛い辛い8年間。
ナミの、辛い辛い8年間を。
「――これがあんたが知りたかったことの全部」
ココヤシ村を一億ベリーで買う。
たった一人の少女が。
ずっと一人でそれだけのために海賊から盗みを働いて。
そうやって仲間も作らずに生きてきたのか。
10歳のころから、8年間。
残り700万ベリー?
じゃあ9300万ベリーを一人で?
自分を殺したくなった。
懸賞金一億ベリー程度の海賊なら一人で狩れる自信がある。今まで何度か狩ってきたんだ、それは今更だ。ただただ自分の強さのみを求めて、救いたいと、それしか考えずに結局村になんの貢献もせずに能天気に生きてきた。ただただ村を救うことだけを考えて自分の生き方をしてこなかったナミの辛い生き方。それを俺は知らずにのほほんと生きてきた。
「っ」
自分にいらいらする。そして、それと同時にそれを課したアーロンが憎くて仕方ない。
気づけばぐっと、拳を握り締めていた。
「ベルメールさん、頼みがあるんだ」
絶対に村を救うという意志はもちろんあった。でも負けても自分が死ぬだけ、なんて簡単な気持ちもどこかにあった気がする。みんなのこれからの命がかかっている。
改めてそれを思い知らされた。
気合を入れなおさなければならない。
というわけで。
「ん?」
「これ、綺麗にしてくれない?」
俺の一張羅。
大切な灰色の甚平を脱いで手渡す。他の甚平はもうない。船が転覆した際に流れていってしまった。
格好を綺麗にすることになんの意味があるんだと思われるかもしれないが、結構違う。動きやすさがウリの甚平が海水をしみこみすぎて重いし、なによりも塩でパリパリになっている。全力で動いたら皮膚にこすれて痛そうだ。
何よりも自分の服装次第で本当に気合が入る……これは師匠の影響かもしれないけど。あの人結構無駄なところに力入れたりしてたし。
「いいけど、急にどうしたの……ってあんたその服ぼろぼろじゃない!」
ベルメールさんが甚平を脱いだ俺の服を見て驚いた顔に。
「まったく……いいわ。ゲンさんから服を借りてきなさい。その間に洗っといてあげるから」
「え、でもゲンさんもすごい音のしたほうに行ったんじゃ? もう帰ってきてるかな」
「さぁ、そろそろじゃない?」
「いや、そろそろってさ。もし帰ってきてないのに勝手にゲンさんの家に入って服借りてきたら俺、完全に泥棒じゃ?」
「……ちっ」
――ばれたか。
「今『ちっ』って言わなかった? 小さく『ばれたか』って言ったよね!?」
「はいはい、ごめんごめん」
「全然謝ってないよね! 息
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