第三話「やはり俺はカミトポジションか」
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「食らえ、灼熱の劫火球!」
これをチャンスと見たのかクレアの手から大きな火球が放たれた。
火炎球は精霊魔術の中でも高位に位置する魔術だ。精霊魔術の威力は籠められた神威と契約精霊の強さによって変わる。
放たれた火球はスカーレットを巻き込んで爆発し、衝撃の余波で周囲の木々が放射状に薙ぎ倒された。これだけ見てもかなりの高威力だと知れる。
十代の少女が使う精霊魔術じゃないな。
クレアの才能に舌を巻いていると、爆炎地からスカーレットが出てきた。炎属性のため当然ダメージは皆無。そして、エストもまったく応えた様子は無く、宙に静止していた。
む、エストの雰囲気が変わった……?
まるでスイッチが入ったかのように突然空気を変えたエストは奇怪な音を響かせながら、その姿を変える。通常の長剣から巨大なバスターブレードへ。
「なっ!?」
姿を変えたエストは不意を突きスカーレットを一閃する。まともに斬撃を食らった火猫は胴体から真っ二つに切断され、虚空へと消えた。
「スカーレット!」
一撃。それだけで顕現する力のすべてを失ったのだ。
こうなってしまっては仕方がないな。もしかしたらクレアが降すかもしれないと思ったが、もはや認めざるを得まい。
俺はクレアを押しのけ、エストの前に立った。
「ちょっと何やってるのよアンタ! 危ないから離れなさい!」
クレアの声を意識から追いやり、目の前のエストに集中する。エストは切っ先を俺に向け、轟音をあげながら飛来した。
「リシャルト!」
エストに向かって手の平を突き出す。すると、脳裏に呪文が浮かび上がった。
これも転生特典の影響か? だが今はありがたい。
――古き聖剣に封印されし気高き精霊よ。
――汝、我を主君として認め契約せよ、さすれば我は汝の鞘にならん。
契約式を詠唱しながら並列思考で構築していた術式を起動し、突き出した手に防御系の魔術を掛ける。
回転する剣の切っ先は魔術で強化した手の平と拮抗し、火花を散らした。
強大な神威を叩きつけられるが、それを柳の様に受け流し最後の詠唱を口にする。
「――我は三度、汝に命ずる。汝、我と契りを結び給え!」
「嘘……精霊契約!?」
クレアが驚愕の声を上げる。刹那、エストの刀身が青白く輝き、突き出した左手の甲に焼けるような痛みが走った。
「ぐぅ……!」
激しい閃光と轟音が鳴り響く。咄嗟に防御魔術と結界を張ったのは日頃の訓練の賜物か。
目を開けるとエストの姿は無く、足をハの字にして地面
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