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巫哉
巫哉
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「…憶えてればな」



「そこまで記憶力悪くないから大丈夫!」



 『彼』が微かに笑った。それを見た日紅も、笑う。



「ふふ。巫哉笑った!」



「何だよ俺だって笑うよ。悪ぃか」



「ううん、嬉しい!やっぱり巫哉とずっと会ってないって変な感じ。いつも一緒にいたから。いきなりいなくなっちゃって、心配したんだからね!?誘拐とか病気とか事件に巻き込まれてたらどうしようって」



「事件?病気?誘拐?この、俺が?ははっ」



 『彼』は目を丸くして、それから笑った。満面の笑みだった。日紅は虚を突かれてぽかんとしてしまった。



 暫く呆けていた日紅は、我にかえると、泣き笑いの顔で両手を広げて『彼』に突進した。



「巫哉ぁ〜!」



「うお!?」



 びたん!



 案の定壁に阻まれたが、それでも日紅はぐしぐしと泣き続けた。



「もう巫哉ぁ〜本当に本当に本当に心配したんだからね!探してもどこにもいないし、もしかして、このまま帰ってこないつもりじゃないかって、本当に…」



「わかった、悪かった。俺が悪かったから、泣きやめよ」



「やだっ!やだやだっ」



 安堵が一気に溢れ出て日紅は子供のように暫く泣き続けた。



「もう巫哉ひどい!ひどい!あたしがどんなに心配したか、知らないからそんなにいつもどおりな顔していれるんだよ!」



「だから、悪かったって」



「じゃあこれからはもう勝手にどっかいかないでね!絶対だよ、絶対!家出する時は一言言ってからどっかいくんだよ!」



「…おまえ、顔ぶっさいくだぞ」



「泣いてるから仕方ないでしょ!?泣かせてるのはどこの誰よ!?もう巫哉なんて、巫哉なんてぇ…!」



「怒ると余計ブスになるぞ」



「うるさーいっ!もう              なんて、知らないんだからっ!」



 今度虚を突かれたように黙るのは『彼』の方だった。



「え…あれ、違ってた…?」



「…いや、あってる。確かに俺の真名(まな)だ」



 思わず問い返した日紅に『彼』は静かに返した。



「でも、おまえはミコヤでいい」



「あ、うんわかった…巫哉」



 『彼』はじっと日紅を見た。いつもそんなに『彼』に見られることがなかった日紅は思わず見つめ返した。



 『彼』の顔は、喋らなければ精巧な人形のようだった。寸分違わず左右対称の顔。月の光を編んで作ったような銀の髪。炎のように輝く瞳。眼下に厚く影を落とす睫。高くすっと伸
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