巫哉
巫哉
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「…憶えてればな」
「そこまで記憶力悪くないから大丈夫!」
『彼』が微かに笑った。それを見た日紅も、笑う。
「ふふ。巫哉笑った!」
「何だよ俺だって笑うよ。悪ぃか」
「ううん、嬉しい!やっぱり巫哉とずっと会ってないって変な感じ。いつも一緒にいたから。いきなりいなくなっちゃって、心配したんだからね!?誘拐とか病気とか事件に巻き込まれてたらどうしようって」
「事件?病気?誘拐?この、俺が?ははっ」
『彼』は目を丸くして、それから笑った。満面の笑みだった。日紅は虚を突かれてぽかんとしてしまった。
暫く呆けていた日紅は、我にかえると、泣き笑いの顔で両手を広げて『彼』に突進した。
「巫哉ぁ〜!」
「うお!?」
びたん!
案の定壁に阻まれたが、それでも日紅はぐしぐしと泣き続けた。
「もう巫哉ぁ〜本当に本当に本当に心配したんだからね!探してもどこにもいないし、もしかして、このまま帰ってこないつもりじゃないかって、本当に…」
「わかった、悪かった。俺が悪かったから、泣きやめよ」
「やだっ!やだやだっ」
安堵が一気に溢れ出て日紅は子供のように暫く泣き続けた。
「もう巫哉ひどい!ひどい!あたしがどんなに心配したか、知らないからそんなにいつもどおりな顔していれるんだよ!」
「だから、悪かったって」
「じゃあこれからはもう勝手にどっかいかないでね!絶対だよ、絶対!家出する時は一言言ってからどっかいくんだよ!」
「…おまえ、顔ぶっさいくだぞ」
「泣いてるから仕方ないでしょ!?泣かせてるのはどこの誰よ!?もう巫哉なんて、巫哉なんてぇ…!」
「怒ると余計ブスになるぞ」
「うるさーいっ!もう なんて、知らないんだからっ!」
今度虚を突かれたように黙るのは『彼』の方だった。
「え…あれ、違ってた…?」
「…いや、あってる。確かに俺の真名だ」
思わず問い返した日紅に『彼』は静かに返した。
「でも、おまえはミコヤでいい」
「あ、うんわかった…巫哉」
『彼』はじっと日紅を見た。いつもそんなに『彼』に見られることがなかった日紅は思わず見つめ返した。
『彼』の顔は、喋らなければ精巧な人形のようだった。寸分違わず左右対称の顔。月の光を編んで作ったような銀の髪。炎のように輝く瞳。眼下に厚く影を落とす睫。高くすっと伸
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ