6話
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てその糸口ぐらいは掴めるのではないかと期待して勉強を続けたが、結局とんでもない名案が浮かぶようなことはなかった。
個人としての充実感と政治家を志すものとして現状に打つ手のない無力感が自分がちっぽけな存在であるという恐怖を連れてくる。
帰国を考えたのも留学が終わったことで祖父にこれからを相談したかったからだ。
実家に帰ると昔から仕えているジョアンナや執事のヘルマーさんが暖かく迎えてくれて私室の掃除は行き届いていつ帰って来ても使えるように準備されていた。
祖父も忙しいながら帰国の事は伝えていたので会えることになっていた。
その時間潰しに読んでいた本と同じ結論しか至れなかった。だから落ち込んでいたのだ。これまでの旅の結論がこの本と同じなんて。
結局、泣き言言うために帰ったようで嫌だったが相談出来る人はおじい様しかいなかった。
「帰ったようじゃな。おかえりエリィ」
「ただいま戻りました。おじいさま」
数ヶ月に一度は帰っているのでそんなに久しぶりという感じではない。毎回の報告も欠かしていない。だが表情に出ていたのだろう。
「今度の留学は期待に沿えなかったのかね?」
「はい」
頷いておじい様を見た。少し足を悪くして杖を突いて疲れと苦労が感じられた。おじい様の前だと恥ずかしかった。何の手助けも出来ない無力な自分が。
政務に邁進しているクロスベルの最高権力者の一人。そのおじい様を持ってしてもこの状況はずっと変えられない。私程度が何か変えられると思うほうが間違いなのだ。
「では、何も得るものはなかったのかい?」
「いえ」
「なら良いじゃないか。それがわかっているだけでも有意義な旅だったはずだよ、エリィ」
「でも、私は」
「そう上手く行くことは多くない。だが上手く行かない、悪い状況であってもそれを一気に解決出来ることのほうがおかしなこともある。少しずつ一歩ずつ問題に当たり続けることが大事なんだよ」
「それは」
「だからエリィ、気を落とさないようにな。また好きな事をしなさい」
有意義な旅だった。何の結論も出なかったが政治家としての積み重ねは続けていた。自分をちっぽけだとか思っていたのが恥ずかしい。おじい様が頑張っているのに何もしていない私が落ち込んでいられない。
でも結局これからのことを相談することも出来なかった。秘書になって政治を手伝いたいと思っていたけど、それも早いような気がする。
ベルから何度か一緒に働かないかと手紙を貰っている。
そんな風に一晩中あれこれ考えても結局結論は出なかった。
翌日、ジョアンナの用意した朝食を食べながら最新号のクロスベルタイムズを読むと警察を批判する記事が出ていた。
読んだ瞬間、新しい道筋が閃いた。
「これよ」
ク
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