第二十三話
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俺たちはさらに迷い続けた。
そして、ソレにでくわした。
例えて言うなら恐怖そのもの
森の中の木陰全てを合わせた影よりもなお濃く暗い…とでも言えば良いのだろうか、漆黒の闇の塊のような鎧武者がむき出しの殺気をぶつけて来る。
こちらに向かってくる一歩一歩はそう早いものではないが威圧感の桁が違った。
俺はひどく口のなかが乾き、じっとりと嫌な汗が出て来る。
腰に下げた剣を俺は抜くと
「コルホさん。申し訳ない、わたしはウソをついた」
「な、なんですかい」
「アレには勝てそうもない」
コルホと俺を繋ぐ縄を剣で斬り、刃を返して柄のほうを彼に向けた
「お逃げなさい、丸腰で逃げろとは言わないのでこの剣でも持っていくのです」
「あ、あぁ。 そうさせてもらうぜ…」
コルホは俺の剣を受け取ると脱兎の如く進行方向の反対へ逃げ出した。
俺は丹田に気合いを入れ、雄たけびを上げた。
握った槍の柄がみしっと鳴るくらいの力を込める。
世に数多ある殺し合いの中で、実力の劣る者が格上の相手を倒した事例だって少なくは無い。
その逆に比べれば微小であったとしても……
思い切り踏みこみ渾身の力で漆黒の化け物に突きを入れた。
勢いが勝ったのか化け物の鎧にこすれて火花を飛び散らせながら左の肩口に浅い一撃が当たった。
だが、小揺るぎもしない。
間、髪を入れずもう一撃を加えるが、これは受け止められた。
ここまではただ、俺の実力でも計っていたのだろうか、そこからこの化け物の息をつかせぬ猛攻が始まり、俺は避け、受け流すだけの防戦一方に追い詰められた。
化け物の操る白銀の槍は直撃すれば致命となることは疑いなく、その切っ先を避け、受け止めることに俺は全神経を集中させた。
だが、まるで疲れを知るようなこともなく、言うなれば淡々とこの化け物は攻めてくる。
俺も同じように疲れることなく永劫に戦い続けられるならばいつまでもこの勝負は着くこともなく続けられたかも知れない。
だが、極度の集中を要するこの戦いは俺の体力をごっそりと奪い取り、俺の気力が尽きたらそこで決着が着くであろう。
ならば---
俺はまだ、体が動くうちに賭けに出た。
一歩、前に出る。
左腕を己の鋼の槍から離し
左の脇腹と左腕で化け物の槍を挟みこんだ
賭けに勝った!と思った。
化け物は瞬時に己の白銀の槍から手を離すと、それまで存在していなかったまっくろい剣を腰から引き抜き振りかぶると俺の脳天に振り下ろす……
本当は一瞬の出来事のはずなのに、ゆっくりと、ゆっくりと俺に死の刃が振り下ろされる…
気が付くと、俺は見知らぬ場所の寝台で
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