第二十三話
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の腐った、屍人の臭いが…
これほど昔の経験が役に立ったのは、この世界に来てからは初めてだった。
予備知識だの映画でグロ耐性を付けただのは生温かい目でしか見られない、まぁ無いよりはいいが。
こういう人知を超えた生き物--いや、存在--は、己の思念を以て生者の意思に干渉してくる。
なんの心構えも持たない者ならば、あっという間に心を乗っ取られ思いのまま操られるか、あるいは恐怖に凍ってその場から動くことも自分の意思を表すことも出来なくなる。
だが、俺は違う----数多の魔物を斬り伏せて来た過去がある。
苦しい、憎い、辛い、妬ましい、温かい血肉がほしい、……
そんな感情の奔流を流れ込まそうとするが、俺は奥歯を噛みしめるとその干渉を弾き飛ばし、槍を横に一閃し、当たった屍人を吹き飛ばす。
槍から手を離すと腰の剣を引きぬき屍人の手足を斬り飛ばし行動不能に持ち込んで行く。
切り飛ばした傷口から飛び出た腐汁を避け、鎧の肩当てで体当たりをかまして、立っている屍人の数を一つずつ減らしていった。
10年ぶり以上の魔物との戦いであったがゆえ、若干手間取ってしまったが片づけることはできた。
「もう大丈夫だ、安心したまえ」
助けた相手が女の子ならいいのにな、なんて思うシチュエーションだった。
男は腰を抜かしていたので比較的容易に両手に縄をかけることに成功した。
その縄にさらに別のロープをかけ、俺の腰ベルトと結んで逃走に備えた。
…それにしても聖戦の系譜の世界でモンスターだと?という疑問が俺の頭の中を巡る。
なんにせよ屍体をそのままにするのも元の持ち主への冒涜に違いない。
俺は捕まえた男にも手伝わせ、手近な太めの木の枝を剣で切れ目を作り折り取りそれをスコップ代わりにしようと思ったが重労働すぎたので辞め、剣を鞘に納め、鞘ごと入った剣で辛抱強く地面を掘り屍体に土をかけ、落ちていた枝を墓標代わりに突きたて成仏を祈った。
この盗賊はコルホという名前だった。
税が重くて生活がつらいから土地を領主に返納し、わずかな金をもらって王都に出てきたはいいがいい仕事にありつけずついつい悪さに手を染めたって話を涙ながらに語った。
…全部が嘘じゃ無いだろうが額面通り信じる訳にはいくまい、捕まった以上は心証を良くするか俺の油断を誘おうとするか、そのための話と思っておこう。
「人殺しをしてから金品を奪ったりはしてませんね?」
「も…もちろんです。そんな恐ろしいこと考えたこともありません」
…こいつは強盗団だったよな、そんな訳あるかよ。
コルホの信用度が下がった。
「それなら良かった。荒れ地の開拓などの大変な作業を課される刑罰あたりになるでしょうけれど、現地の管理者から食事などの世話はあるはずですから、頑張ってくだ
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