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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第七話 贖罪
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鼻腔を広げながら、狂気的な笑みを浮かべ笑うメンヌヴィルに、勢い良く啖呵を切ったロングビルが杖を振るう。

「ハハハッ!!」

 飛んでくる岩の弾丸を、炎の弾で燃やし、砕きながら、メンヌヴィルは次々に炎球を飛ばす。
 ロングビルは飛んでくる炎球を走りながら避けると共に、負けず岩の弾丸を飛ばしていく。
 既に原型が分からなくなっていた中庭に、ダメ押しとばかりに乱れ飛び始めた石弾と炎弾が、中庭に最後の止めを差す。
 最初は互角だった石弾と炎弾の打ち合いだが、時間の経過とともに、戦況は次第に炎弾に傾いていった。空を飛ぶ炎弾の数は変わらないが、石弾の数がどんどんと少なっていったのだ。

「っ、ぁ、っく、ハッ」

 魔力切れが原因ではなかった。

「ぅ、は〜っ、は、ぁあ、は〜っごほっ! はっ、ぁ」

 火の海となり始めた中庭が生み出す。煙と高温が、ロングビルの体力をどんどんと削っていったのだった。同じように中庭にいるメンヌヴィルだが、火系統のメイジが、それも高位のメイジが自分の放った火で苦しむことはなく。煙と高温で苦しむロングビルに、平然とした様子で笑みを向けていた。何らかの方法を使っているのだろうが、それが分からなければ意味はない。

「っはぁ〜、っくっけほっけほっ……く……そ……」
「随分と粘ったが、もう終わりのようだな」

 遂に膝を着いてしまったロングビルに、メンヌヴィルがゆっくりとした動作で歩み寄っていく。

「さあ、嗅がせてもらおうか、お前が焼ける臭いをっ」
「っは〜……っ……」

 杖の先を突きつけられるが、ロングビルの目に怯えも恐怖も見えない。
 いや、あるのはあるのだが、それを強い決意が押しのけているのだ。
 絶体絶命の場にいるにもかかわらず、ロングビルは、息を荒げながらも、変わらずメンヌヴィルを睨みつける。目前の死に怯えることなく、睨みつけてくるロングビルが、メンヌヴィルには理解できなかった。今までにもこのような状況は何度もあったが、皆命乞いや悲鳴をあげるだけだった。感情の動きさえ温度により判断できるメンヌヴィルだからこそ、この状況でも温度に乱れが見えない、感情に乱れが見えないロングビルが理解が出来なかった。

「……まあいい、そんなことは些細なことだ」

 理解できなくてもやることは変わらない、いつも通り燃やすだけだ。
 メンヌヴィルは睨みつけてくるロングビルを燃やそうと、炎を放とうとした瞬間――。

「っ〜は〜は〜……っ……遅いんだよ……このハゲ……」
「……さっきから本当に口が悪いですな。ミス・ロングビル」

 メンヌヴィル目掛け迫ってきた炎球がその凶行を止めた。
 炎球を後ろに飛んで躱したメンヌヴィルが、その炎球が飛んできた方向に顔を向ける。
 火の海となった中庭に
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