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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第七話 贖罪
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ながら問いかける。

「あんたが噂通り温度で世界を見ることが出来たとしても、土で出来た槍に気付くはずが……」
「ほう、お前は知っているのかオレの目のことを、ならば何故気付かなかったのだ?」
「え?」

 メンヌヴィルが顎に手をやり不思議そうな声を上げると、ロングビルは一瞬どういうこと? と眉根を寄せたが、直ぐにその意味に気付いた。

「あっ!」
「今頃気付くとは、まあ、いいところを突いていたが、オレがゴーレムに対応出来た時点で気付くべきだったな」

 ロングビルが声を上げると、メンヌヴィルは自身の身体について語り始めた。

「気付いたようだな。お前の知っている通り、オレのこの目は何も見えてはおらず、代わりに温度で世界を知る」

 メンヌヴィルは目に指を伸ばし義眼を取り出してロングビルに向けと、次に指を耳に指し示してみせた。

「温度で世界を見ることが出来るようになったのはな、別に目が見えなくなってからではない。目が見えなくなってから変わったのは、この耳だ」
「……聞いたことがある。目が見えなくなった者が、それを補うように他の感覚が鋭敏になると」
「その通りだ」

 ロングビルの言葉に、メンヌヴィルは頷いてみせる。

「目が見えなくなってから耳が異様に効くようになってな。集中すればモグラが穴を掘る音さえ聞こえるようになってな。いや重宝するよこれは。特にお前のような土系統のメイジと戦う時はな。温度ではゴーレムを見ることは出来ないが、人と同じように足で動く必要がある。地面を蹴る音や風を切る音で位置や大きさも分かるようになった。それに、今の攻撃のように地面からの攻撃も……知っているか、ああいう時、地中が微かに音を鳴らすのを」
「……クソっ」

 長々と話を続けるメンヌヴィルから視界を外すことなく、ロングビルは悪態をつく。状況は最悪を通り越して絶望的だ。メンヌヴィルが言っていることが本当ならば、奴に有効的な手段を自分は持っていない。奥の手である巨大ゴーレムは時間が掛かりすぎる。メンヌヴィルは、用意しているのを待ってくれるような馬鹿な奴ではない。
 打つ手なし、しかし、ロングビルの目に諦めの色は見えなかった。  

「……ほう、この状況でも諦めないか。何か考えでもあるのか?」

 ロングビルの様子を敏感に感じ取ったメンヌヴィルが、愉快気に笑いかけてくる。
 震えた声が出ないよう、必死に気を張りながらロングビルは言い放つ。

「さてね、そんなに知りたけりゃ、自分で聞き出してみな!」
「はっ! いいぞ貴様! ああ! 嗅ぎたいな!! お前が焼ける臭いが! さぞかしいい香りなのだろう!!」
「出来るものならやってみなこのキ○○イ野郎!! 生憎とあたしの匂いを嗅いでもいい男は、一人だけなんだよ!!」

 
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