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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第七話 贖罪
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 訳も分からずアニエスとロングビルの様子を見ていた学院の生徒や銃士隊の隊員たちは、ロングビルが口にした「殺す」という物騒な言葉に息を飲んでいた。視線は、殺すと口にしたロングビルではなく、銃士隊の隊長であるアニエスに向いている。アニエスとロングビルの話は食堂にいる者たち全員の耳に届いていた。アニエスはともかく、ロングビルの声は特に大きくはなかったが、豹変とも言うべきアニエスの様子に、学院の生徒だけでなく、普段の冷静な隊長のことを知っている隊員たちも驚き黙り込んでしまっていたのだ。

「隊長……まさか……本当に?」
「……え? ……殺すって? ……え? どういうこと?」

 アニエスがコルベールのことを殺そうとしているのは、その名前が出た時に感じる殺意で間違いないことは分かる。しかし、その理由が分からない。
 二人の会話から『魔法研究所(アカデミー)実験小隊』というものが何か関係していることは分かるが、それがどう関係しているのかが分からない。
 普段の厳しくも公正明大なアニエスのことを知っている銃士隊の隊員たちは、何か理由があったとしても、学院の教師を殺そうとする隊長のことが理解出来ず呆然と。
 突然学院にやってきて、厳しい訓練を強いた銃士隊の隊長だけれど、傭兵たちから救い出してくれた味方だと思っていたアニエスが、訳の分からないものを作ったり、変なことを言ったりするところはあるけれど、何時も優しくて面白い先生であるコルベールを殺そうとする意味が分からず、学院の生徒たちは混乱していた。
 そんな様々な想いが込められた視線が向けられる中、二人の会話は続く。








「だったら……どうした……その様子だと、お前は知っているようだな、奴が何をしてきた男かということを……わたしの……わたしの故郷を……家族を殺した男だということをッッ!!!」
「――ッッッ!!??」

 悲鳴のようなその叫びに、一瞬空気がなくなった気がした。
 真空のような物音一つしなくなった食堂に、最初に音を生き返らせたのは、

「……知っておったよ」
「っ!?」

 アニエスではなく、それに相対するロングビルでもなく……この学院の長であるオスマン氏だった。

「君は、あのダングルテールの生き残りなんじゃね」
「……あなたも知っていたのか……知っていて奴を雇ったというのかッ!! 人殺しのっ!! 虐殺者のあの男をッ!!」
「もちろん知っておったよ」

 目を血走しながら声を荒げるアニエスに対し、オスマン氏の様子はとても穏やかだった。それどころか、まるで世間話をするかのように、オスマン氏の口元には淡い微笑を浮かんでいる。
 それが感に触ったのか、アニエスは抜き身の剣を握る手に力をいれると、オスマン氏に詰め寄っていく。


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