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シャンヴリルの黒猫
28話「精霊魔法」
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拡散して消え去った。

「……すごい」

 ユーゼリアがこぼす。

 エルフのみができる精霊魔法は、世間一般に知られている魔法に比べて、威力は桁違いに大きかった。その変わりに、事前に精霊に自身を認めてもらい、契約をしてその力を分けてもらう必要があるのだが。だが残念なことに、精霊を肉眼で見れるのはエルフのみで、会話ができるのもまた、エルフのみだった。これがあるから、エルフは未だに森の奥地で生き延びていられるのだ。

「くそっ。弓だ! 弓を引け! 魔法を放てる者はソレでもかまわん!」

 頭が怒鳴る。びゅっと飛んできた矢は、だが1本も3人に掠ることもなかった。クオリだ。

「【風よ】!」

 しかし、突風程度では飛来してくる魔法を抑えることはできなかった。クオリが詠唱に入ろうとする。しかし、その必要はなかった。

「悪いが、そうはいかせないな」

 再びアシュレイが腕を振り上げる。そのまま右に左に不規則な動きで腕を動かした。その様子は、指揮者に似ていた。
 アシュレイが腕を一振りする度、風龍で薙ぎ倒された土杭の向こうからザシュッという音と悲鳴が聞こえる。3人の中で最も背が低いユーゼリアだが、その生々しい音から、アシュレイが戦っているようであることは分かった。

「くそっ。総員、撤退! 撤退だ!」

 襲撃は、再びアシュレイ達の勝利となった。





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