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シャンヴリルの黒猫
28話「精霊魔法」
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戦闘は目立つ。舌を噛むぞ、喋るな」

 後方からは足音が十数人分。大きな荷物を揺れに気を配りながら、しかも2人も抱えたままでは、流石のアシュレイも追いつかれるのは時間の問題だった。やろうと思ってできないわけではないが、そうすると2人が酔うだろう。

「うぅぅ……」

「大丈夫か? 悪かったな、突然2階から飛び降りたりなんかして」

「だ、大丈……うぇ」

 どうやらこれでも気分が悪くなったらしいクオリを、ユーゼリアが介抱する。そうこうするうちに、周りは完全武装した男達が取り囲んでいた。人数はポルスの時の倍である。
 先頭に立つのは、その際逃げたあの(かしら)だった。

「また会ったな」

「今度こそ捕まえさせて貰おうか。今度は油断などしない」

「せいぜい頑張れ。俺はユリィを守らなくてはならんからな、負けてやるつもりは微塵も無いが」

 そう言って腕を振り上げる。次の瞬間、頭のすぐ横に控えていた男が崩れ落ちた。

「ぐあああ!」

 のたうち回る男を、誰もが呆然と見る。

「手の甲の健と、足首の健を断たせてもらった。回復魔法でも1、2時間は動けまい。……さあ」



 次は、どいつだ?



――ゴクリ。


 誰かが唾を呑みこんだ音が、聞こえた。辺りにアシュレイへの殺気が満ちる。それを一身に受けているはずの当の本人は、まったく意に介した様子はなかったが。

「うおおおお!!」

 一斉に男達が襲いかかってきた。ある者はナイフを、ある者は弓を、またある者は魔法を。最早味方に当たっても構わないという意気込みだった。

「つ、杖が!」

 ユーゼリアが魔法で応戦しようとするが、媒介となる杖――厳密に言えばその宝玉――が手に無い今、人間が自力で魔法を放つのは至難の業だった。



 そう、人間(・・)ならば(・・・)



「【我請う。数多生命(いのち)支えし大地の君、天穿つ杭とならんことを】!」

 突如として3人を中心に、同心円状に地面が鋭く突き上げた。一瞬にして、地面は巨大な針山地獄となる。逃げ遅れた何人かが、背中なり足なりを土の杭で貫通され、悲鳴をあげていた。

「クオリ!」

「エルフは精霊魔法の遣い手。ここは任せてください」

「ふむ、なら実力拝見といこうか」

 腕を組んでクオリを見下ろしたアシュレイに笑みを返し、クオリは再び声を張り上げた。

「【我請う。大気に遊びし自由なる君よ、生を喰らう龍とならんことを】!」

 目の前で風が渦巻いて、やがて龍を形作る。風の龍は咆哮すると、土の杭をなぎ倒して男達に向かっていった。腕や脇腹を食い破り、最後にまた咆哮し、
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