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吊るし人
第九章

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「そういうことよ」
「だからですか」
「そう、貴女はその娘のお陰で吊るし人ではなくなったのよ」
 タロットの結果はハッピーエンドとして昇華したというのだ。
「そうなったのよ」
「ううん、何か本当に」
「色々と予想しないことになったみたいね」
「正直何て言っていいかわかりません」
 実際にこう言うしかないゆかりだった。着替え中の愛生を待つブティックの中で沙耶香にもこう言うばかりだった。
「今の状況は」
「そうでしょうね。けれどね」
「それでもですか」
「これからも楽しくね。そう過ごしてね」
「わかりました。それじゃあ」
 ゆかりは戸惑いながらも沙耶香の言葉に頷いた、そうしてだった。
 沙耶香は女の子達を見回しながらゆかりにこうも言ったのだった。
「じゃあ私は今からね」
「デートですか」
「ええ、だからね」
 これで分かれるというのだ。
「また会いましょう」
「はい、それじゃあ」
「今度は。といきたいところだkれど」
 狙ってはいる、しかしこれまでのことを考えるとどうしてもこう言ってしまう沙耶香だった。
「貴女とは巡り合わせがよくないみたいだから」
「それでなんですか」
「どうしてもそうしたことはなれないみたいね。残念だけれどそれなら仕方ないわね」
 ここでもこう言ってそのうえでだった。
 女の子達を連れたままでゆかりの前から消えた、そうしてだった。
 一人になったゆかりに後ろから愛生の声がしてきた。
「先輩いいですか?」
「服見て欲しいのね」
「はい、着てみました」
 それでだというのだ。
「ちょっとお願いします」
「わかったわ。じゃあ見させてもらうわ」
「はい」
 愛生も明るい声で言う。
「それじゃあ」
「後で私のも見てね」
「わかりました」
 二人で笑顔で話す。ゆかりの足も両手も自由になり顔も笑顔になっていた、どうしてそうなったのかも思い自然に笑顔になる彼女だった。そのうえで愛生のところに向かうのだった。


吊るし人   完


                 2012・1・1
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