第三章
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「共にいればな」
「確かにそうですね」
ここで言ってきたのは勝海舟だった、幕府に残った数少ない人材である。
その勝がざっくばらんとも取れる物腰を将軍の前だから何とか礼儀正しくさせながら述べたのであった。
「あの二人がいれば。ですが」
「それでもか」
「これは私の見立てに過ぎませんが」
それでも言う勝だった。
「あの二人は別れると、今度そうなれば」
「終わるか」
「そんな気がします」
これが勝の見立て、もっと言えば予想だった。
「絆が強い分、終わるかと」
「そうなるか」
「そう思うだけですが」
「ううむ、幕府にとっては厄介な二人だが」
慶喜は微妙な顔になった、彼等は確かに幕府の敵である。だがそれでもその資質と絆の強さのことを思って言うのだった。
「それでもな」
「二人の絆が終わることは残念ですか」
「そうじゃ。そうならないことを願うがな」
幕府が終わってからも二人でいて欲しいと願っての言葉だった。
「果たしてどうなるか」
「それはわかりませんが」
勝も強くは言えなかった、あくまで思うだけだったからだ。だが不幸にして勝の予想は当たることになってしまった。
幕府は倒れ戊辰戦争カら廃藩置県があり様々なことがあった。大久保が国を築き上げ西郷が支える、まさにそうした関係だった。
大久保は使節団に入り西洋のことを学び西郷は留守を守った、その間に李氏朝鮮と騒動が起こってしまった。
ここから征韓論になり西郷は自ら李氏朝鮮に行き話をしようと考えそれは決まった、だがこの政策を過激であり時期尚早であるとして使節団から戻った大久保は必死に止めた。
それが西郷と大久保の衝突になった、二人は朝議、明治帝の御前でまさに決闘というべき言い合いをした。
その結果西郷は退き大久保の慎重論でいくことになった。敗れた西郷はそのまま政界を退くことを決意した。
だがその西郷の私邸に一人の男が来た。その者こそは。
「一蔵どんか」
「西郷どん、いいか?」
大久保は深刻な面持ちで西郷に対して告げた。
「話があるとよ」
「そうか、じゃあ話をするか」
「茶がいいか焼酎がいいか」
「焼酎がいいでごわすな」
薩摩の酒、それを飲みながら話そうというのだ。
「そうするでごわす」
「そうでごわすな。それじゃ」
「二人で飲むでごわす」
二人は微笑みになった、そのうえで西郷の家、質素なその家の奥に入り二人で向かい合って酒を酌み交わした。大久保はその中で西郷に対して言った。
「おいだけじゃなかと」
「他のお歴々もでごわすな」
「西郷どん、残ってくれもんそ」
大久保の言葉は切実なものだった。二人で向かい合い胡坐をかいて砕けた様だったが言葉は違っていた。
「政府に。そして東京に」
「ここにでごわすか」
「
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