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ラ=ボエーム
第三幕その一
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「そうだろう。じゃあ開けてくれよ」
「ああ。ちょっと待ってくれ」
 兵士の一人が立ち上がる。そして鍵を手に柵に向かった。
「店じゃまだ飲んでるってのにな」
 酒場には灯りがある。そしてそこからは女達の明るい声が聴こえてきていた。
「ムゼッタがいるんだろう?」
 鍵を手に持っている兵士は座って留まっている同僚にこう応える。
「あいつはいつもああじゃないか」
「それもそうか」
「まああいつのことはいいさ。門を開けるぜ」
「ああ」
 門が開けられる。そして人夫達や牛乳売りの女、そして色々な商人達も入って来た。
「お疲れ様」
「これはいつものお礼ですよ」
「おお、有り難い」
 商人達が挨拶代わりにバターやチーズ、そして鶏肉に卵といったものを兵士達に手渡す。これは所謂役得というものであった。
「それじゃあ今日も頑張ってな」
「はい」
「朝までお勤め御苦労様」
 商人や馬引き達は兵士達に挨拶をしてそれぞれの市場へ向かって行く。彼等が行った後で一人の小さい少女が兵士達のところにやって来た。ミミであった。
「あの」
 青い顔をしている。そして小さな声で兵士達に尋ねた。
「人を探しているのですが」
「どうしたい、娘さん」
 兵士達も彼女に声をかけた。
「人を探してるって」
「マルチェッロっていう画家の方なんですけれど」
「マルチェッロ」
「確かムゼッタの今の恋人のか」
「はい、そうです」
 ミミはそれに応えた。
「この辺りの酒場にいるって聞いたのですが」
「それならあの酒場じゃないのか」
 兵士達はこう言って門の側の店を指差した。

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