暁 〜小説投稿サイト〜
ラ=ボエーム
第二幕その三
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

 ロドルフォがミミに応える。
「愛の喪中なんだ」
「喪中」
「おいおい、下らない話は止めてくれよ」
 マルチェッロはここでロドルフォに対して言った。
「今宵はクリスマスなんだ。思い切り騒ごう」
「騒ぐか」
「そうさ、ワインをどんどん持って来てくれ」
 またボーイに声をかけた。
「ランブルスコをだ。こうなったらとことんまで飲むぞ」
 そして本当に派手に飲み食いをはじめた。まるで何かを忘れようとしているかの様であった。食べていると道の方が騒がしくなった。
「何だ?」
「国王陛下でも来られたのか?」
 ロドルフォ達は冗談を交えて声をあげる。
「それとも大女優が」
「だとすれば誰だろうな」
 だがそこにやって来たのは国王でも女優でもなかった。来たのは派手な紅の絹の服に帽子を身に着けた美しい女であった。
 赤い髪にはっきりとわかる目鼻立ち、身体はダンサーの様に均整がとれている。黒い髪と瞳は周りを挑発し、惑わすかの様であり媚びる様な、それでいて誘う様な視線を辺りに放っている。
「あいつか」
 マルチェッロはその女を見て顔を苦くさせた。
「まさかとは思ったがやっぱり来たか」
「どうしたの、一体」
「ムゼッタが来たのさ」
「ムゼッタ!?」
「知らないのかい?今最も有名なパリジェンヌだけれど」
「あまり」
 ミミはロドルフォの言葉に首を傾げさせた。
「カルチェ=ラタンには殆ど来なかったから」
「だったら知らないか。彼女は酒場の女でね」
「ええ」
「派手なことでここじゃ有名人なんだ」
「そして」
「おい、言うのはよしてくれよ」
 マルチェッロは憮然として言った。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ