第二話「紅い髪の少女との出会い」
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「大変でしょうね」
「大変も大変。あのグレイワースの婆さんを御しきれる者は果たして世界に何人いるのやらだ」
そもそも居るのかも不明だが。ふとクレアが固まっていたのに気が付いた。
ああ、やはりな、と思いながらも一応問いかける。
「どうした?」
「ねえ……貴方のお祖母さんって、もしかしてグレイワース・シュルマイズ? あの学院長の?」
「うん? 別に俺の祖母ではないが、確かに俺の言う婆さんはグレイワースを指す。個人的に交流があってな。そういえば、婆さんは精霊学院の学院長をしていたな。すっかり忘れていたわ」
ほれ、と懐から取り出した便箋にクレアは悲鳴にも近い声を上げた。
「これって、帝国の第一級紋章印じゃない!」
第一級紋章印とは特殊な技術で精霊を封印した紋章印のことだ。帝国が発行している紋章印では最高位に位置し、複製することは不可能とされている。勿論、一般には出回っていないがクレアは一目で見抜いたようだ。
「さすがは精霊使いだな。良い真贋の目を持っているようだ」
「……なんであたしが精霊使いって?」
固い表情で後ずさる。どうやらいらぬ警戒心を抱かせてしまったようだ。
「旅をしていたからな。気配というものには敏感なんだ。君の傍には精霊の気配がする。それも湖にいた時から変わらず傍についているようだ。大方、君の契約精霊だろう」
「へえ、よく分かったわね。――出てらっしゃい、スカーレット!」
クレアの横で今まで変わらず傍にいた精霊の気配が急に膨れ上がった。
炎を巻き上げながら一匹の猫が虚空から現れる。猫は「ニャァ〜」と鳴き声を上げ、クレアの足に擦り寄った。
「火猫……炎属性の精霊か。それが君の?」
「ええ、あたしのパートナーのスカーレットよ」
無い胸を張るクレア。む、今のは失礼だったかな。
「しかし解せないな。君のスカーレットは見たところ上位精霊だ。なのに何故、新たな契約精霊を求める?」
俺の言葉にクレアは顔を俯けた。心配そうに鳴くスカーレットを抱き上げて顔を上げる。
「スカーレットは大切なパートナーよ。でも、あたしには目的がある。そのためには、強い精霊が必要なの」
「……良い目だ」
「え? なに?」
何でもないと首を振り再び歩き出す。先程のクレアの瞳からは強い意志が感じられた。
こいつは化ける。確信にも近い予感が胸中を過ったのだった。
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