暁 〜小説投稿サイト〜
アラベラ
第一幕その七
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
い程の田舎です」
「ふうむ、それは大変でしたな」
「まあよくあることですよ。私はその熊を何とか倒しましたが」
「いやはや、それはそれは。ところで」
「はい」
 彼はヴェルトナーの問いに顔を向けた。
「貴方は私の旧友であったあのマンドリーカ大尉の甥と今仰いましたが」
「はい」
 彼はそれを認めた。
「それが何か」
「いえ、私は彼に手紙を送りましたので。彼はどうしたのですか?」
「叔父ですか」
「はい」
「亡くなりました」
 彼は俯いてそれに答えた。
「そうだったのですか」
 それは考えなかった。ヴェルトナーは友の死を聞き唇を噛んだ。
「いい男でした。友人としても軍人としても」
「有り難うございます。叔父も天国で喜んでいることでしょう」
 彼はそれを受けて言った。
「そして今では私がマンドリーカ家のたった一人の者です。叔父は私に自分の全てを残してくれました」
「そうですか」
「それで手紙を開いたことはお許し下さい」
「はい」
「それでお聞きしたいのですが」
 彼はまた従者に目配せした。
「あの写真を」
「はい」
 従者はそれを受けて一枚の写真を取り出した。それはヴェルトナーが手紙に添えたあの写真であった。
「この写真は貴方の娘さんで間違いありませんか?」
「はい。私の娘に間違いありませんが」
 彼はそれに答えた。
「アラベラと申します。手紙にも書いてありましたが」
「そうですか」
 マンドリーカはそれを聞いて頷いた。
「この手紙によるとお一人だそうですが」
「はお」
 ヴェルトナーはそれを認めた。
「婚約もしておりませんが」
「お手紙の通りですね」
 彼はそれを聞きまた頷いた。
「それでは少しお話したいことがあるのですが」
「そうですか。それなら立ち話も何ですから」
 ヴェルトナーはそれを受けて後ろにいた妻に目配せをした。
「少し席を外してくれ」
「はい」
 彼女はそれに従いその場から立ち去った。
「御前も少し休んでいてくれ」
 マンドリーカも後ろにいる従者にそう伝えた。彼はそれに頷き下がった。
 二人はテーブルについた。そして話をはじめた。
「でははじめますか」
「はい」
 マンドリーカはそれに了承した。そして話がはじまった。
「あの手紙の内容についてですが」
 話は手紙のことであった。これはヴェルトナーもおおよそ見当がついていた。
「はい」
 気構えはできていた。それを受けて顔を向けた。
「娘さんの婚約者を探しておられるようですが」
「はい」
 その通りであった。彼はそれを認めた。
「ですがそれは私の叔父に対してだったのですか?御言葉ですが叔父は」
「それはわかっていました。彼が人生の黄昏時にいることは」
 彼はそれに対して答えた。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ