第9話『帰郷』
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「見えたぞ! アーロン・パーク!」
ヨサクらしい男の言葉通り。正面にどでかい建物が。
「……悪趣味だな」
まるで城のように仰々しいそれに胸がかきたてられる。
みんなは大丈夫だろうか。
あんなものが建築されるぐらいに搾取されながらみんなは生きてきたに違いない。
不安になる。
もしかして誰か死んでるのかもしれない。
ナミは生きてるらしいし、今は大丈夫そうだろう。それどころかいい仲間に囲まれている。だけど、他の人は? みんなナミくらい自由なのか? いや、きっとそれはありえない。だったらあんた馬鹿でかい建物が建つわけがない。
ベルメールさんは? ノジコは? ゲンさんは? 皆は無事に生きているだろうか?
だから――
「こら、疲れるなカバ!」
「やっぱアレだよ、お前の蹴りがきいたんだよ」
――予定を変更する。
このまままっすぐに魚人たちと戦おうと、アーロンをぶっ飛ばそうと思ってたけど先に皆の顔を見に行こうと思う。今麦わらたちの船をひいている海牛よりは明らかに俺のほうが早く泳げる。
「すまない、俺はここで降りる。助かったよ本当にありがとう。じゃあな!」
返事を聞いているほどに心に余裕はなかった。
海に飛び込み、全速力でココヤシ村の方向へと向かう。
ただ、みんなの無事が知りたかった。
急いで、急いで。ただ急いで。
気づけばもうココヤシ村の前に立っていた。
「……着いた」
意を決して一歩。村へ入る。
入った瞬間、泣きそうになった。
空気が懐かしかったからとか、そんな詩的な感情じゃない。
村の家がひとつひっくり返っていたからだ。しかも、この跡はごく最近できたもの。多分半日と経過してない。
村人の姿が見当たらないことが俺の最悪の予想に拍車をかける。
「くそっ……くそっ」
こぼれてきそうになる涙をぐっとこらえて村を走り抜ける。
小さな円形のベンチを覆う木の傘とでもいえばいいだろうか。憩いの場として、日差しを防いでくれたりした大きな木だ。今にしてみれば大人一人の分の身長と大して変わらないが、子供のころはいつも見上げてはこんなに大きくなってナミを守れる男になりたいとか考えていた。
その木が根元から折れている。これも半日と経過していない。
俺が道に迷いながら泳いでいる間に魚人たちの不興をかって全滅させられたのかもしれない。そう考えただけでまた涙がこぼれそうになる。
また、走る。
奥へと走り、脇に入り。
「見えた!」
我が家だ。
こんこん、と震える指を押さえてどうにかノックをする。
「はーい」
声が聞こえた。
「誰? みんなさっきのすごい音した場所に向かったって
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