第9話『帰郷』
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『普通』なら正しく、文句をいうことだって間違ってはいない。
だが。
「――助けたのはあたしのほう! これだからよそ者は困るわ」
それは『普通』という但し書きの条件の下でしかない。鼻の長い男の言葉を遮って不満げにノジコは呟く。
「?」
その言い分に首をかしげた鼻の長い男。ノジコがそれに答える前にベルメールが口を開く。
「でもあんたは島の子、よね? 魚人に手を出せば殺されることくらいわかってるでしょ」
「ゴサにいたんだから、あんたはゴサの子でしょ? ……きっと十分すぎるほどわかってるはず」
ベルメールの言葉を、ノジコが付け足した。
「わかってるけど、あいつらは俺のとうちゃんを殺したんだ、たとえ俺が死んだって許さない。アーロンパークにだって行ったんだ。だけどアーロン一味の女に邪魔された、魔女みたいな女で。あいつだって殺してやりてぇよ! おれはくやしい!」
子供の怨嗟の声だ。
この村の事情をあまり知らない鼻の長い男は対応に困り、なんといおうか考えるのだが、それよりも早く、というか子供の言葉が終わるや否や。間髪いれずにノジコが言葉を返した。
「じゃあ死ね」
その言葉に鼻の長い男はお茶を噴出し、子供は驚きの顔を。ベルメールはやれやれと言った様子でそれを見つめている。
「やるだけやってぶっ殺されて楽になってきな死ぬことを知ってまでやるのなら復讐上等」
言い切って、それから指をその子供に突きつけた。
「でもこれだけは覚えておくんだね! あたしとその魔女みたいな女があんたを邪魔したことであんたは2度! 命拾いしてる。茶飲んだら出てきな、あたしは甘ったれたやつが嫌いなんだ」
「おい! こんなガキに言いすぎなんじゃねぇのか!?」
鼻の長い男の声に、あくまでも淡々とものごとを語っていたノジコの表情に初めて感情の色が浮き出した。まるで苦痛を吐き出すように、自分の身がそれにさらされているかのように顔を伏せて言う。
「あたしは……ずっと未来を見据えて……死ぬよりもずっと辛い生き方を選んだ子を知ってるわ! だからこいつみたいに! あいつみたいに! 真っ先に死ぬことを考えるようなやつが大嫌いなの!」
吐き捨てられた感情に、誰もが言葉を失った。
やがて、男の子が言葉をつむぐ
「おで……どうじだらいいですか」
その言葉に、ノジコがやさしく問いかける。
ここはココヤシ村、その外れ。
ハントが育った村で、その家。
そこに、ハントが心配していたやまなかった彼らの姿が、確かにあった。
それから少し時計の針を進める。
ゴサの子供は泣きながら反省し母親のところへと帰り、ゲンゾウが武器を所持したという理由でアーロンに殺されかけた時、鼻の長い男
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