SAO編
episode6 消えゆく炎と折れた意志
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かあああああああああああっ!!!」
蒸発して消えた。
◆
黒のコートがはためく。
同色のブーツが、石畳を激しく踏みしめて駆ける。
『索敵』もそこそこに最高速度でダンジョンを駆け抜け、そして辿り着いた時には。
「やめるんだシドっ!!!」
俺が駆けつけた時は、もう既に勝負は完全に決していた。
「お前が、お前があああああああああああっ!!!」
「シド、シドっ!!!」
シドは、何かにのしかかる様に馬乗りになって、その物体を力任せに殴りつけていた。
続いて、その何かが、人だと分かった。
俺が最初に人と気付かなかったのは、それがあまりにも歪な形状に歪んでいたからだった。
「っ…!」
その男は、…両足が無かった。
のしかかられた男はくぐもったうめき声を上げて必死に手をばたつかせるが、首と肩口を押さえつけられて力だけでは抜け出せないように固められている。いや、そもそも抜け出せたところで膝の上下で足が切断された状態では逃げることもままならないだろう。
思わず息をのんだ俺の目の前で、
「お前が潰したのは、右手かああああああああああ!!!」
シドが再び絶叫する。
その右手が、血のように真っ赤に光を放つ。あれは『体術』スキル、《アースブレイク》…本来は地面を這う爬虫類や昆虫など、丈が低くて攻撃が当たり難い敵に使う技で…強烈な手刀で、敵を切り裂く技。
たっぷり一秒近い長大な溜め時間の後、振り下ろされたそれが。
「ヴぉおおおお!!?」
組み伏せられた男の、右腕を肘から切り落とした。
同時に、男のHPが減少していき。
残り一割を切って、ほんの数ドットを残して止まった。
「っ、やめろシド!!!」
それを見てもなおも攻撃の手を緩めようとしないシドを、俺は後ろから羽交い絞めにして押しとどめる。シドはその長い手足をばたつかせ、意味の分からない言葉を叫びながらなおも手足を振り回す。いつもの憎らしいほどの冷静さは欠片も無く、眠たげだった目は限界まで開かれて瞳孔が小刻みに揺れる。
そして、その目からは、幾筋もの涙が流れていた。
「シド!!!」
「ふーっ、ふーっ、う、うあああああああああ!!!」
俺の腕の中でなおも叫びながら、…だが、徐々にシドが力を失っていく。見れば、既にシドのHPゲージも赤く、何かの拍子でゼロになりそうなほどに減少していた。だが、力を失い、声の張りが無くなっていくにつれて、その頬からの涙が勢いを増していく。
と。
「……グく。ヴぉ前らには、ヅかまらない」
ぐったりとしていた男が、嫌な響きを持つ声を上げた。
慌てて振り向いた俺が目に
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